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2021.07.19

6次産業化のプロに聞く!山口県・周防大島発「失敗しないジャム作り」とは?

6次産業化のプロに聞く!山口県・周防大島発「失敗しないジャム作り」とは?

「6次産業化」とは、1次産業の農林漁業と、2次産業の製造業、3次産業としての小売業を融合して、新たな産業を形成する取り組みで、自分が作った生産物の付加価値を高めようと、国内各地でさまざまなプロジェクトが生まれています。とはいえ、これから新たに始めるとなると、どんなコストがかかるのか?と二の足を踏む生産者も少なくありません。全国の6次産業を長年、調査してきた食農夢創の仲野真人さんがそんな疑問にお答えします。今回は、瀬戸内海で「ジャム」を6次産業化した周防大島の事例をご紹介!

ポイント
・6次産業失敗の代名詞とは?
・「規格外品」ではなく完熟果肉を使用
・小規模を逆手に取って「定番商品」は作らない



山口県の瀬戸内海に浮かんでいる周防大島(屋代島)でオシャレなカフェを併設しているジャム屋があるのはご存じでしょうか? 

このジャム屋を運営している「株式会社瀬戸内ジャムズガーデン」の松嶋匡史社長は、元々電力会社に勤務するサラリーマン。新婚旅行で訪れたフランスのコンフィチュール(ジャム)専門店に魅了され、脱サラをして周防大島へ移住しました。

当社はジャム屋の運営だけでなく、さつまいもやブルーベリー、ブラッドオレンジ、いちご等の農産物等の生産にも取り組んでおり、自社で農産物の栽培(1次)からジャムの加工(2次)、そしてカフェでの販売(3次)という6次産業化を実践しています。


失敗の代名詞「ジャム」で成功した理由



ここで注目したいのは「ジャム」の6次産業化に成功しているということです。なぜなら、業界内ではジャム、ジュース、ジェラートとドレッシングを表す頭文字「3J1D」に取り組むと「6次産業は失敗する」と言うのが常識だからです。

その理由はさまざまですが、私は「3J1D」は6次産業化の第1歩として取り組み安い一方で、当然みんなが取り組むために生産者同士での競争が激しく、さらにスーパーに行けば大手企業のジャムが100~300円で並んでおり、そのなかで差別化をするのが難しいからではないかと感じています。では、なぜジャムズガーデンはその「ジャム」の6次産業化で成功できたのでしょうか?


ジャムズガーデンのジャム作りの特徴としてまず挙げられるのが「ジャムに合わせた原料生産」を行っている点です。


一般的に生産者がジャムに加工する場合、生果用として収穫した際に傷がついていたり形が悪かったりする、いわゆる「規格外品」を、捨てるのがもったいないのでジャムにする場合が多くあります。


当社は周防大島内の生産者約60戸からも農産物を仕入れていますが、生産者から仕入れる際、市場への出荷や直売所に並べるための収穫ではなく、ジャムの加工に合わせて完熟した状態での収穫をお願いしています。そうすることで、糖度40度の、砂糖を入れすぎずに素材の味を最大限に引き出したジャムが製造できるのです。


また、ジャムズガーデンは年間180種類以上、季節ごとに常時20~40種類のジャムを取り揃えており、さらに品揃えだけでなくデザイン性も重視しています。そのこだわり抜いたジャムは1本700円~2,300円となっており、スーパーのジャムに比べると相当高い値段となっています。

しかし、よく考えてみてください。大手食品企業はジャムを作るための設備投資も行っており、低コストで大量生産が可能です。一方、生産者が6次産業化に取り組む場合は、大手企業に比べてどうしてもコストでは勝てない。だからこそ、この会社は小規模であることを逆手に取り、「定番商品は作らない」ことによって、消費者が訪問するたびに新しいジャムが並んでいるという状況を創り出すことで差別化を図っているのです。


「定番商品」は作らない



それだけではありません。ただ「ジャム」を販売するのではなく、「ジャムの食べ方」まで提案しています。ヒット商品の中に「焼きジャム」がある。一般的には多くの人はトーストしたパンにジャムを塗って食べるが、この「焼きジャム」はパンにたっぷりと塗ってからトーストすることで素材であるサツマイモのホクホク感を堪能できます。

瀬戸内海が一望できるカフェでジャムを味わう
瀬戸内海が一望できるカフェでジャムを味わう


また、瀬戸内海が一望できるカフェでは「ジャムピザ」やジャムをソーダで割った「マーマーレードソーダ」を味わえることができ、自然の中でジャムを味わうこと自体が付加価値となっています。まさに「島でしかできないジャムづくり」によってファンを増やしているのです。

瀬戸内ジャムズガーデンの事例から6次産業化のポイントを紐解くと、ひとつ目は目的に合わせた生産を行うことで生産者の強みを生かすということです。

例えば生鮮であったとしても、市場に出荷するのと直売所で販売するのとでは、消費者へのリードタイムは異なるはずです。生鮮でも加工品でも「どうすれば一番美味しい状態」で消費者に届けられるのかを追求することが重要です。

もうひとつが、その商品の「食べ方」まで提案するということです。消費者は「ジャム」と言われると「パンに塗る」という固定観念があります。しかし、「このような食べ方をしたら美味しい!」と紹介してあげることで、消費者は新しい食べ方を知ることができます。それは他の農林水産物でも同じです。「食べてみたいけど食べ方がわからない、料理の仕方がわからない」という消費者は数多くいます。特に、外国人はそうですね。

つまり、保存方法やお勧めの食べ方(レシピ等)を添えてあげる等の一工夫によって差別化が図れる可能性があるのです。このようにただ余ったもの(規格外品)があるから加工するといった6次産業化ではなく、「生産者ならではの6次産業化」に取り組むことこそが「事業の付加価値」を高められるのです。(ポートレート撮影=平岩 亨)

仲野真人
仲野真人(なかの・まさと)◎2005年立教大学経済学部卒業後、野村證券入社。2011年野村アグリプランニング&アドバイザリーに出向、6次産業化分野を中心に地産地消や農林水産物・食品の輸出に携わり、全国の事例を調査。2019年退社し、食農夢創を創業、代表取締役に就任。「農林漁業」を「夢」のある「食産業」へ「創造する」をビジョンに全国各地で調査・研修・イベント、コンサルティング業務を行う。

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