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第7話 代表取締役 上野耕平 「日本の農家は外国人特定技能者を求めている」

第7話 代表取締役 上野耕平 「日本の農家は外国人特定技能者を求めている」


追い風となった「特区認定」


現在、YUIMEは「産地間連携」を軸に、人手不足に悩む農業分野で人材派遣を行なっています。

外国人材では、特定技能での在留資格に特化して「派遣」を扱う数少ない事業者として、全国で営業を展開しています。

創業ストーリーの第1話から第3話までは、スキルの高い人材を雇用・育成し、派遣することで、働き手や農家さん、県や国からも少しずつ認知されるようになったお話をしました。

ここで、弊社にとって2度目の大きな追い風が吹きます。沖縄県が、外国人の農業就労が認められる「特区認定」を受けたのです。

国は、経営規模の拡大などによる「強い農業」を実現するため、「国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業」を立案しました。これにより、外国人の人権にも配慮した適切な管理体制のもとで、一定水準の技能等を有する外国人材の入国・在留が可能となります。

沖縄県は、外国人材が必要な品目や時期を調査するなど準備を進め、2018年5月に「沖縄県国家戦略特別区域計画」を国に申請、6月に認定されたのです。愛知県、京都府、新潟市に続く4区域目でした。

また、特区においては、農作業や加工の作業等の農業現場で即戦力となる外国人材を「特定機関(人材派遣会社)」が雇用契約に基づいて受け入れなければいけません。

南大東島の製糖会社

弊社は南大東島とJAおきなわでのサトウキビ事業実績、大東糖業と沖縄県の推薦により、特定機関企業に認定されました。「日本の農業は、いずれ外国人雇用が解禁される」という考えでずっと動いていたので、これは本当に嬉しい報せでした。

実はこの特区ですが、認可にはハードルが高く、農業実績はもちろんのこと、海外人材の実績が必須だったのです。

その点エイブリッジは、前述のミャンマー事業を皮切りにベトナム進出までしていたことや、その担当者が海外オフショア事業と農業事業を兼務していたこともあり、まったく問題ないとのお墨付きをいただき、あれよあれよという間に認可がおりました。ミャンマー事業がまさか、ここで活きてくるとは!チャレンジしているとチャンスは巡ってくると肌で感じております。

翌2019年4月には、新たな在留資格「特定技能」が創設されました。これは、技能・知識・経験を活かして特定産業分野の業務に従事する外国人向けに、新たに創設された在留資格です。「特定技能」は1号と2号に分かれており、農業にたずさわれるのは特定技能1号です。

登録支援機関となったYUIMEでは、入国から就業、就業中の支援まで一気通貫でサポートしています。

この特定技能1号は14分野で認められたビザですが、そのうち、繁忙期と閑散期の差が激しい農業と漁業のみ派遣が認められています。

しかし、誰もが派遣できるというわけではなく、前述の「国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業」にて認可がある企業のみが可能ということで、YUIMEにおきましても、特定技能1号での外国籍人材の人材支援事業が可能となっています。

日本の農家は「外国人に来てほしい」


日本にはもともと「技能実習制度」があります。実質的に貴重な労働力となっている制度ですが、課題が多々あります。「特定技能1号」はその解決策のひとつです。

こちらは、技能実習と特定技能1号の違いをまとめた表になります。

技能実習と特定技能1号の違い

技能実習生については、失踪、途中帰国、病気、喧嘩、金銭トラブルなどのニュースが後を絶ちませんが、これは「最低賃金で働かせる」「労働環境や住環境が悪い」ということも原因のひとつでしょう。

一方の特定技能1号は、日本人と同等の給与を与えることが義務づけられています。

弊社は、2019年4月の「特定技能」創設後、カンボジアやベトナムなどの「技能実習生送り出し機関」を数十カ所ほど訪ね、「特定技能1号で送り出したい」という交渉を続けてきました。

ちなみに、技能実習を2年10カ月以上修了していれば、特定技能1号の人材として認められますが、経験がない場合は、専門分野の試験に合格し、国際交流基金日本語基礎テストの一定水準(N4以上)に達しているなどの条件が課されます。その場合、日本初入国での就業のケースが多いため、雇う企業の作業トレーニングや生活サポートなどの負担が増大します。

しかし、技能実習修了生であれば、日本での就業経験があるため、即戦力が期待できます。YUIMEでは現在(2021年2月)、125名の特定技能1号外国人材認定(以下「外国人特定技能者」)を雇用、39名を登録支援機関として農家さんに送り出しています。

外国人特定技能者を派遣してから、農家さんからは「日本人ではなく、外国人を派遣してほしい」と言われるようになりました。

そもそも日本人の場合、派遣で農業経験者はほぼいません。農業というのは朝が早く、仕事は体力勝負。事務職のように定時で終わらず、雨が降ったら休みになるなど、不規則な面も多い。結果的に生産性が低くなるのです。

一方、外国人の場合は、自国での農業経験者が多く、しかも自国の5倍くらいの給料をもらえます。つまり、仕事に対するモチベーションが違う。働き方も日本人の派遣とは違って、沖縄でサトウキビ製糖にたずさわったあとは、北海道の大根栽培が始まるまで熊本でトマト栽培に従事する、といった具合に非常にタフです。稼いだお金は、ほとんど全額、自国に送金します。

要するに、農家さんからすれば、やる気も馬力も学ぶ姿勢もあって、仕事は早いし、途中で辞めたりしない。「外国人に来て欲しい」となるのも必然なのです。(構成=堀香織)

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