年間売り上げ3,000万円を超えるスター農家をプロデュースしてきた藤野直人さん。生産性をアップするには、経営者と働く人が同じ意識を持った組織を作らなければならないと話しています。上司も部下も一緒に成長できる組織を目指すためにも、まずは長年の習慣を見直すところから始めてみませんか?
ポイント
・上司はひとりがいい
・意識のズレを減らすには?
・評価の基準
どうも、農業総合プロデューサーの藤野です。
今回もさっそくまいりましょう!今回の「スター農家理論」は、「組織の構造と評価制度見直そう」というお話をします。
生産性を上げるための組織の構造とは?
今回お伝えするスター農家理論は、
・「ひとり1上司」理論
・「姿勢のルール」理論
・「結果で評価」理論の3つです。
では、順を追って説明……の前に、今回の話は「意識構造学(識学)」をベースにしていることをお伝えしておきます。
経営者と社員の意識のズレ
「意識構造学」とは、組織の生産性が向上しないのは、社長や社員がそれぞれ持っている認識のズレが、組織運営に問題をもたらしているからだ、ということを前提にしている考え方です。
この意識のズレ(=誤解・錯覚)を起こさず、正しい認識に変えるために何をすればいいのかを学習し、実践することで組織の問題が解決できるとして、企業だけでなく、スポーツチームや家庭、非営利団体などさまざまな組織で取り入れられています。記事の最後に参考書籍を紹介していますので、興味を持たれた方は手に取ってみてくださいね。
理想の組織はピラミッド型
組織論には、いろいろなパターンや流派があります。同じような組織論を唱えていても、社長のキャラクターによって、目指している組織の形は違ってきます。
また、社長一人で全部やる、ピラミッド型組織をつくる、権限移譲型にする、部下に自由な裁量を与えるなど、企業の成長段階によって、最適な組織論がありますので正解はひとつではありません。
ですが、それだと結論が出ませんので、あえて断言します。稼げるスター農家を目指し、年間売り上げ1億円とか3億円を超えていくレベルであれば、意識構造学にもとづき、まずはピラミッド型の組織をきちんと作るべきだと思います。
組織図を整えよ、「ひとり1上司」理論
組織がピラミッド型になっていない「ダメ農家あるある」を例にとって考えてみましょう。
ダメ農家は、父ちゃんが会長、その息子が社長で、母ちゃんも現役で作業に出ています。しかし、スタッフが何かの作業に取り掛かろうとすると、上の3人が、次のように指示を出してきます。
息子(社長)「●●を優先して」
父ちゃん(会長)「なんでお前は今、そんなことをしてるんだ?」
母ちゃん(会長夫人)「そうじゃなくてこうやりなさい、こっちの方が効率的でしょう?」
……おわかりですよね? これでは混乱が生じてしまい、働いている人たちにとって、誰が上司か? 誰の指示に従えばいいのか?わからない状態です。
振り回されないためには、どうしたらいいのでしょうか? そういうときには、手書きで構わないので、組織図を書いてみてください。働く人ひとりに対して、上司がひとりの状態になっていますか?
「ひとり1上司」にする意味は、上司が部下の育成に責任を持つようになるためです。社長が何でもかんでも指示を出すのではなく、直属の上司が言うようになります。一方、部下の立場からすると、迷いがなくなるので、作業や仕事のスピードがアップします。
組織も個人も成長するための第一歩は、「ひとり1上司」が基本なのです。
「姿勢のルール」なら「できる・できない」は存在しない
あなたの農家では、組織で決めたことがしっかり守られていますか?
それとも、「ウチはなかなか続かない」とか、「社長がまた何か新しいことを始めた程度にしか思われていない」と諦めムードが漂っていませんか?
社長や幹部が決めたことを、現場がばっちり徹底する、そんな組織が理想ですよね?
そのために、先ほどの「ひとり1上司」と同時に行う必要があるのが、「姿勢のルール」作りです。
「姿勢のルール」とは、“挨拶”や“身だしなみ”、“出社時間を守る“といった「できて当たり前」言わば「できる・できない」が存在しないことを指します。
これに対して、 “売上達成”とか“収穫量”“作業効率の改善”といった行動面におけるルールは、「できる・できない」の差がはっきりします。
ルールには、姿勢面と行動面のふたつが存在します。これらは、性質が異なることを認識して使い分ける必要があります。そして、姿勢のルールは組織の構成員として、最低限守る必要がある決まりです。これを明確に示し、全員に必ず守らせます。あなたが経営者や各部門の責任者だった場合、決して諦めてはいけません。
ルール作りの例をあげてみましょう。
【全社】共通で守るルール
・挨拶は相手に届くような声の大きさで。
・病気で休む場合は、業務開始1時間前までに上長に連絡。
・業務中の過度な私語は慎む。
【生産部門】が守るルールならば、
・生産、出荷工程の管理は、マニュアルに従う。
・トラブル・ミスは、その日の業務が終了するまでに上長へ報告。
・作業の進捗は、その日の18時までに日報に記入。
例えば【ニラ部門】であれば、
・農具、資材の使用後は所定位置に戻す。
・収穫コンテナは土の上に直置きしない……といったところでしょうか?
まずはこれらを徹底できる組織習慣を身につけましょう。その後に行動のルールを設定すると、決められたことが着実に実行できる組織へと成長します。
「どこを評価するべきか?」結果に直結
これは文字通り「結果で評価する」という考えです。その反対は、結果にたどりつく前の過程(プロセス)や、努力・頑張りを評価する方法です。
シンプルな話、経営者は結果で評価されています。一生懸命にトマトを作っても、味が悪ければ評価されません。あれだけ頑張ったのに、と嘆いても意味がありません。売り上げが伸びたり、利益を出さしたりしないと評価に値しないのです。
従業員だからといって、結果でなく頑張りで評価されるということはありません。上司に求められる結果によって初めて評価されるのです。だからこそ、組織図を作って、一人ひとりの役割に求める数値目標や責任を明らかにすることが重要です。次に例をあげてみます。
【代表者】の数値目標
・1年間で〇万円の利益を残す
【生産部門長】の数値目標
・生産部門では、1年間で〇万円の利益を残す
【農場長、現場リーダー】
・一日の収穫量〇kg
・収穫量のうち〇%は製品になる(歩留まり〇%以上)
といった具合です。この場合は、この結果を果たすために、各個人に権限もセットで与えます。評価は、結果が達成できたかどうかです。
人を採用するときは、理念やビジョンに共感する人を選びますが、結果に直接結びつくプロセスは、部下の力量に応じて、日時や週次、月次で管理します。でも評価は結果がすべてです。「よく頑張ってるなぁ」という印象で評価はできません。
以上で、第8回は終了です。今回は意識構造学(識学)という理論から、代表的なものを紹介しました。まだまだ奥が深いですので、ちょっと興味を持ったなら参考図書も読んでみてください。それでは次回は「数値化(データ化)して何が分かる?」編です。お楽しみに!
藤野直人(ふじの・なおと)/株式会社クロスエイジ代表取締役、農業総合プロデューサー◎「スター農家理論」とは、売上3,000万円を超える農家向けの農業経営理論。今春には、事業の成長と効率化を実現す「スター農家クラウド」サービス紹介サイト。