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「稼げるスター農家をめざせ!」経営計画 誰が?いつ?どう作る?

「稼げるスター農家をめざせ!」経営計画 誰が?いつ?どう作る?

稼げるスター農家が増えれば、日本の農業界は輝く!……そんな信念をもとに、農家の経営改善をサポートする農業総合プロデューサーの藤野直人さん。今回は、ちょっと難しい経営戦略の話。「経営者なら未来を考えるべきだ」として、3〜5年先の計画づくりのヒントを教えます。


ポイント
・戦略とは回り道しないための方法
・PDCAのPが大事
・計画づくりに情熱を持て


どうも、農業総合プロデューサーの藤野です。

今回もさっそくまいりましょう、今回の「スター農家理論」では、「経営計画」を作る意味についてお話しします。

戦略的って格好いい!


今回お伝えする理論は、

・「戦略=中期経営計画」理論

・「PDCAのP」理論

・「情熱を持った個人が考えろ」理論の3つです。順を追って説明しましょう!


回り道せず最短距離でたどりつくのが戦略


戦略的に生きる、戦略的な経営者、戦略人事……。

「戦略」というと、カッコいいですよね? 「戦略」という言葉は、「戦いを略する」と書きます。目的・目標に対して、余計な回り道をせずに最短距離でたどりつく方法を考えて実行に移すためにも必要なのです。

経営の分野では、「全社戦略」だとか、「事業戦略」「機能別戦略」のほか、デジタル化戦略、成長戦略というように、さまざまな使われ方があります。


戦略=中期経営計画のこと



売上5,000万・1億・3億を稼ぐスター農家をめざす場合「戦略」とはシンプルに「経営戦略」、つまり「中期経営計画」をきちんとたてることだと考えれば良いのです。


この場合の中期経営計画とは、この先、3〜5年のスパンで将来のあり方を策定することです。

3〜5年としましたが、実際には年数より売り上げ5,000万円、1億円のどの壁を突破するかまでの計画だと考えるとよいでしょう。

それから次のステップに進みます。


過去の経営を分析し、未来に生かす



①過去の決算内容を把握し、現状を分析する


決算書を時系列で比較して、自分のところの経営がどのような経緯を経てきたのか把握します。

次に、役員報酬や事務所の家賃など一定した経費(固定費)と、売り上げが増えればそれに連動して増えていく種苗費、肥料費、農薬費、燃料費、選果に関わる外注加工費といった変動費の割合を分析します。この結果、どれくらいの売り上げを上げれば、固定費が賄える=利益を出すことができるかが見えてきます。


②既存顧客への販売実績をもとに、今後の販売計画や新規顧客の獲得計画を立てる


販売先別に過去の売り上げ実績を整理し、今後の各取引先の伸び率を想定して、3〜5年先の売り上げ計画を立てます。


強み・弱みはどこか? 市場環境を知れ


③「SWOT分析」で経営の強み・弱みを分析するとともに、商品を取り巻く環境を分析することで、具体的なアクション項目を決める。


SWOT分析とは経営戦略を立てるときの専門用語


SWOTとは、経営の「Strength(強み)」と「Weakness(弱み)」に加えて、商品を取り巻く「Opportunity(機会)」と「Threat(脅威)」の4つの頭文字を組み合わせた経営用語です。


販売力や営業力、栽培技術、品質、売れ行きなど、自分の農園の強みや弱みを洗い出します。同時に自分のところで栽培している品目や商品を取り巻く市場環境と、競合他社や食文化の違いなどといった外部要因について情報分析を行ったうえで、作付け品目の割合や規模を決めます。


未来を考えるのが経営者


④人員計画を立てる


ここまで来たら、いよいよ大詰め。まずは人員計画を決めます。売り上げ計画や戦略の方向性をふまえて、技能実習生を増やすのか、リーダークラスの日本人社員を雇用するのか、パートや外注加工のアルバイトを雇うのかなどといった人員計画を立てていきます。


⑤そのうえで、最初に作った「過去の決算書の推移分析」をもとに、3〜5年後の中期的な数値計画を策定していきます。



このとき、上記の①〜⑤までの基本的な項目に加え

・売上5,000万円までは、品目の絞り込みと年間の作業の平準化の作戦を考える

・売上1億円までは、現場の労働力の確保と販路の分散を考える

・売上3億円までは、6次化への取り組みでキロあたりの単価アップを考える


など、段階別の要素を加えていきます。


これは完全に経営者の仕事です。3~5年の中長期のスパンで見ているから経営者なのです。年度で見ているのが幹部です。現場スタッフは日々や月次で考えています。時間軸が違うのです。未来を考えない経営者は経営者ではありません、また幹部は経営者に未来を考えさせるためにスタッフや現場を受け持つのです。


農民、農家ではなく農業経営者というのであれば、中期経営計画を持って戦略的になりましょう。


組織作りの第一歩、「PDCAのPが大事」



組織作りができているというのは、組織としてのPDCAがちゃんと回っているかどうかという事です。Plan(計画)・Do(実行)・Check(進捗把握)・Action(改善)です。


組織づくりの正しい順番はどれ?


組織がPDCAでまわる状態を作るために大事なのは「正しい順番」でやること。皆さん、下記をどの順番でやるのが正解かわかりますか?この場合、スター農家を目指す条件として、基本的な栽培技術が身についていて、売り上げ3,000万円を超えていることを前提としています。


①スマート農業系のアプリ導入(現場入力、経営データ見える化)

②会議の運営ルール

③栽培マニュアルの作成

④評価制度の作成

⑤中期経営計画の作成

⑥人の採用

⑦銀行借り入れ

⑧組織図の整備(役割分担の整理)

⑨社内ルールの作成(挨拶や掃除、勤怠、報告などの基本的なこと)

⑩経営者として見たいデータを決める、言語化する



正解は「⑤→⑧→⑨→⑩→①→②→④」です。③⑥⑦は、組織運営のPDCAをまわすことと直接的には関係ありません。会議などで課題として出てきたら着手すればよいです。


いずれにしろ、中期経営計画を作り、作った戦略がうまくいっているかどうかを確かめるためには、スマート農業系のアプリを導入し、その進捗を確認します。


でもアプリを入れる前に、そもそも見たいデータが決まっていないと意味がありません。また、アプリを導入しても社内に入力をきちんと行うための組織習慣ができていないと継続されません。組織習慣を作るために必要なのは上司・部下を明確にする組織図づくりと、基本ルールの徹底です。


計画があり、実行力のある組織があり、見たいデータが見えるスマート農業の仕組みがあれば、定期的に振り返りを行い、活動を修正していきます。そのために週次や月次で会議を行います。そして、四半期や半年の達成度合いに応じてスタッフを評価し、給与を上げていくことで人も組織も成長していきます。


組織作りで大事なのは順番です、そしてその第一歩は必ず中期経営計画です。


中期経営計画を考えるのは誰?

情熱を持って計画づくりを



組織作りのPDCAの中で、最も個人の力量に依存するのが「Plan」の経営戦略の策定です。


「Do」の部分の実行力のある組織作り、つまり組織図づくりについてアドバイスしてくれたり、組織独自の習慣を徹底するためのルールづくりや、評価制度を作成する際は、個人の力量に依存しなくても、アドバイスしてくれたり、サポートしてくれる組織はあります。

また、「Check」の部分のスマート農業、デジタル農業的な取り組みについても、システム選びやなどの面で難しさはありますが、これも勉強できる場所や、サポートしてくれる外部組織があります。


「Action」についても、週次会議や月次会議の運用、課題に対するルールづくりやマニュアルづくりなどを通じて同じように対応できます。



0→1で未来を設計



しかし、「Plan」だけは、計画づくりに対する情熱を持った個人が考えるしかありません。自分ひとりでは難しい場合、情熱を持った協力者に頼るしかありません。依頼する会社の規模は関係ありません。必要なのは、あなたの組織の計画づくりを担当してくれる人の経験や集中力、情熱です。


スター農家のプロデュースを職業としている立場からすると、「正しい依頼先を選んでほしい」と思います。


中期経営計画づくりは、現状の延長ではなく、次の壁を超えるための非常にクリエイティブな作業です。未来の設計図を作るために、「ゼロ(0)」から「イチ(1)」を生み出す仕事だからです。


そのためにも、担当者は、設計図づくりに対する情熱を持っている人や、企業にお願いしなければなりません。


さて、第6回の「経営計画を作ることの意味」、いかがだったでしょうか?


集中豪雨やパンデミックのようなコントロールできない外部要因は確かにあります。でも、事前に準備し、対応していくことはできます。また、PDCAがまわる組織ができていればダメージからの回復が早いです。組織づくり、中期経営計画づくり、どちらも経営者自身が手がける仕事です。がんばりましょう!



藤野直人(ふじの・なおと)/株式会社クロスエイジ代表取締役、農業総合プロデューサー◎「スター農家理論」とは、売上3,000万円を超える農家向けの農業経営理論。事業の成長と効率化を実現する「スター農家クラウド」サービス紹介サイトを公開中。

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