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Editor's Eyes しゃがむ、積む、中腰姿勢の負担軽減!「新型アシストスーツ」で、いつまでも若々しく 農作業も効率アップ!

Editor's Eyes  しゃがむ、積む、中腰姿勢の負担軽減!「新型アシストスーツ」で、いつまでも若々しく 農作業も効率アップ!

収穫物を持ち運んだり、しんどい中腰姿勢を長時間続けたり、農業は体を酷使する場面が多く、腰痛がつきもの。

若いうちは良いけれど、50、60代になったら、いつまで農業を続けられるだろうと、体力に不安を感じる生産者も多いなか、従来のアシストスーツに比べて、動きやすさ、使い勝手が格段にアップした製品がイノフィス社から登場した!

「マッスルスーツGS-BACK®︎」は、従来品とどこがどんなふうに違うのか?━━理学療法士・作業管理士の逢坂大輔さんと一緒にお話を伺いました。(構成:佐々木聖)

左から小山寿弥さん(株式会社イノフィス国内営業部部長 )、 逢坂大輔さん(株式会社シーエフロボタス代表取締役 ロボットビジネス支援機構アドバイザー 理学療法士・作業管理士 )、 高島 繭さん(イノフィスマーケティング部)
左から小山寿弥さん(株式会社イノフィス国内営業部部長 )、 逢坂大輔さん(株式会社シーエフロボタス代表取締役 ロボットビジネス支援機構アドバイザー 理学療法士・作業管理士 )、 高島 繭さん(イノフィス国内営業部)

介護業界から農業現場へ広がったアシストスーツ


YUIME:アシストスーツはもともと生産現場での使用を想定して開発されたものではないと伺いましたが…。

小山寿弥さん/イノフィス国内営業部部長(以下・小山
そうですね。イノフィスでは、訪問入浴介助の作業をアシストするツールとして開発しました。
身体の不自由な方の入浴を介助するのはたいへんな重労働で、腰痛の悩みを抱える方々が多く、なんとかできないだろうか、といったご要望をいただいたのです。

「出先で水に濡れる」「性別や年齢問わず機械が苦手な人でも使える」などといった条件を踏まえて、圧縮空気の圧力でバネの強さを変える人工筋肉を使った「MUSCLE SUIT」(以下、マッスルスーツ)をつくりました。

発売当初(2013年)は、100万円近い購入価格のため、補助金が出る介護業界以外には普及しにくかったのですが、約50万円の製品にモデルチェンジしたころから、製造や物流など他業種でも注目されるようになりました。

最初は介護業界から普及したアシストスーツ/イノフィス提供
最初は介護業界から普及したアシストスーツ/イノフィス提供

低価格化で他業界でも注目されるように


小山:とりわけ、2019年に発売した13万9,000円の「マッスルスーツEvery」(以下、エブリィ)から一気に多様な業種からの引き合いが増え、そのひとつが農業だったわけです。10秒で簡単に装着でき、最大補助力25kg重で腰への負担が大幅に軽減される点が評価されました。

逢坂大輔さん/株式会社シーエフロボタス代表取締役(以下・逢坂)
農業分野になかなかアシストスーツが普及しなかったのは、やはり価格の問題でした。イノフィスさんの、モデルチェンジした50万円台のマッスルスーツは安価な方でした。

他メーカーでは、エブリィと同様の外骨格タイプでもたいてい60万円以上から、高価なものではモーター付電動タイプで100万円を超えていました。それ以外だと、アシストスーツではなく2〜5万円の“サポーター”クラスにとどまりましたから…。

その中間の価格帯にあたる10〜30万円台で購入できるアシストスーツが無いなかで、2019年にようやく10万円台のエブリィが登場したことで、「これなら手が届く」と購入を検討する人が増えてきました。農業界にとっては、かなりのインパクトでしたね。

人工筋肉を搭載したマッスルスーツEveryの登場で、農家の間で普及が始まった
人工筋肉を搭載したマッスルスーツEveryの登場で、農家の間で普及が始まった/イノフィス提供

重いものを持つより、ニーズは他にあった!


YUIME:エブリィを最初に評価してくれたのは、どんな農家さんですか?

小山:我々も当初は、米の袋を積み上げたり、大根を運ぶ、など重い作物を取り扱う作業現場の使用を想定していました。ですが、実際に現場へ足を運んでみたところ、イチゴ農家さんに受け入れられたのが意外でした。というのも、イチゴの摘み取り作業は、中腰の姿勢を長時間維持しなければならず、その負担が「すごく楽になった」と喜んでくださったのです。

そこで販売戦略を見直し、イチゴの産地である栃木県や福岡県の農家にご提案して導入が進みました。イチゴ農家のほかにも、結果としてエブリィを購入してくださった方は、中腰の姿勢で農作業を続けるせいで、腰を痛めやすい人々であることがわかりました。

逢坂:家族経営の農家と、農業法人では、アシストスーツの購入ポイントが異なりますね。特に一人で何役も作業をこなす必要がある場合は、作付け以外の設営準備などの作業にもアシストスーツが役立つと思います。

アシストスーツに必要な条件とは?


逢坂:イノフィスさんは先ほど、当初の想定とは異なる作業での使用について言及されていましたが、もともとは介護現場用に開発されたものなので、作物の運搬や積み上げたりするときのパワー補助には、十分な威力を発揮します。

しかし、購入を検討する農家の要望としては、肩パッドで上半身を押さえつけられる感覚があるので、もう少し身軽に動きまわりやすいようにしてくれれば、さらに助かる、という声を聞いたことがあります。

専門家として、理想のアシストスーツに求める条件は、装着していて「窮屈感がない」「重すぎない」「作業を妨げない(歩きやすい、しゃがみやすい)」の3つをクリアすることが重要だと思います。

特に、農業では1日中装着し、多様な作業があるため、歩いたり、しゃがんだりの連続動作を、ストレスを感じることなく軽やかにこなすことが求められます。

ガススプリング採用の「GS-BACK®︎」は、しゃがみやすさUP


YUIME:その3条件をクリアし、多くの作物生産で欠かせない「中腰姿勢」の負担軽減にフォーカスして開発されたのが、「マッスルスーツGS-BACK®︎」(以下、GS-BACK)というわけですね。

小山:そうなんです。エブリィをはじめとする人工筋肉を使った製品は空気圧の調節が必要なので、空気を入れすぎると、たとえばしゃがみにくくなってしまいます。購入者には調節方法を丁寧に指導していますが、なかなかうまくいかない方もいらして、先ほど逢坂さんからもご指摘があったように、「動きにくい点」が不満なユーザーもいらっしゃいました。

その点を改良するため、2022年8月に発売したGS-BACKでは、従来の人工筋肉ではなく、密閉したシリンダー内に充填した窒素ガスの反力をバネとして利用する「ガススプリング方式」を採用したのです。

2022年夏発売のGS-BACKはガススプリング採用によってしゃがみやすさがアップした
GS-BACKはガススプリング採用によってしゃがみやすさがアップした/イノフィス提供
初動の弱いバネから次第に強いバネに移行し、最初は優しく、だんだん力強くなる補助力によって「しゃがみやすさ」を実現し、中腰姿勢を長時間続ける負担を軽減できます。

人工筋肉ではないから、空気圧の調節も要らなくなったし、軽量化・小型化もはかったので、腰の負荷を軽減しながら、歩く——しゃがむの連続動作を、よりスムーズにこなせるようになりました。

逢坂:農業の現場では、介護や製造業に比べてはるかに、地面付近まで手を伸ばす必要のある作業が多いんですね。そのため、私は農家さんにアシストスーツをお薦めするときには、「膝より低い位置のものを持つときはしっかりしゃがむ必要があるので、あまり窮屈感のないものを選びましょう」と提案しています。

私から見ても、しゃがみにくさや窮屈感が解消されたGS-BACKは農家さんにぴったりの商品ですね。特に「中腰姿勢のアシスト」は農業におけるアシストスーツ選びの大事なポイント。

前傾の中腰姿勢で長時間作業した結果の腰痛は職業病ともいえます。持ち上げと中腰が必要な作業であれば、しっかりと効果を体感していただけるでしょう。

実証実験で裏付けられた!導入費用は2年以内に回収可能


YUIME:農家がアシストスーツを導入する費用対効果はどうでしょうか?

高島 繭さん/イノフィス国内営業部(以下・高島):2021年から2022年にかけて、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトの一環として、イチゴ農園での実証実験に弊社が参加しました。「腰痛対策と作業性向上を目的としたアシストスーツの活用」という項目で、茨城県農業総合センター園芸研究所などと一緒に、エブリィを使用した実証調査を行なったのです。

実証調査した農園では、32アールあたりエブリィを5台導入しました。10アールあたりに換算すると1.6台が必要となりますから、導入費用は、13万6,000円×1.6台分で、合計21万8,600円になります。

実験では、「育苗管理」「定植」「マルチ張り」「収穫」などの5項目で、エブリィを着用した試験区と、着用しない試験区とを比較して、年間の作業にかかった時間を割り出しました。

マッスルスーツを着用したイチゴの定植作業のようす
マッスルスーツを着用したイチゴの定植作業のようす/イノフィス提供
高島:その結果、エブリィを着用した試験区では、作業中に腰伸ばし動作をせずに作業を続けられるようになったことから、5項目全体で年間の労働時間が、10アールあたり約130時間、削減できることが実証されました。


アシストスーツ「Every」を着用した試験区と、未着用の試験区で年間作業時間がどう変化したかを比較した結果
アシストスーツ「Every」を着用した試験区と、未着用の試験区で年間作業時間がどう変化したかを比較した結果/イノフィス提供

高島:5つの作業のうち、労働時間の削減と削減率が最も大きかったのは「収穫」作業でした。イチゴの収穫では中腰姿勢で作業することが多く、その姿勢を長時間保っているとつらいため、たびたび腰を伸ばして休み、作業を中断しなければならないからです。

アシストスーツを着用した試験区では、機械の導入費用はかかりますが、労働時間が低減するため、賃金(時給1,000円)で試算した結果、年10アール換算で13万円のコストカットにつながりました。つまり、エブリィの導入費用は、2年以内で回収可能だという試算です。今回、発売したGS-BACKでも同様の結果になるのではないかということを期待しています。

負担を軽減させることで、生産寿命を伸ばす効果も


逢坂:農作業で中腰姿勢を長く続けると、筋肉だけではなく椎間板にも多大な負担がかかります。高齢者のみならず、若い人にも、アシストスーツを使うことが予防的な腰痛対策になる、という発想をもっていただきたいですね。

作業スキルの向上、費用対効果、投資回収の観点はもちろん重要ですが、なにより大事なのは“笑顔になる”こと。腰が楽になって作業が億劫にならず、笑顔で、いつまでも若々しく働けることによって、農業者の生産寿命が伸びて、担い手不足にも貢献できると思います。

アシストスーツ未着用の試験区では、腰の曲げ伸ばしのため、たびたび作業が中断する
アシストスーツ未着用の試験区では、腰の曲げ伸ばしのため、たびたび作業が中断する/イノフィス提供

どんな補助が欲しいのかニーズを整理し、実地に試してみる


YUIME:改めて農家がアシストスーツを選ぶときのポイントを教えてください。

逢坂:さまざまなタイプのアシストスーツが出揃ってきています。パワーの補助が欲しいのか作業効率化の補助が欲しいのか中腰姿勢保持の補助が欲しいのか、手がける作物によって異なるでしょうから、ニーズを整理しておくことをおすすめします。そのうえで、実際に着用し、試してみるのがいちばんです。

小山:JAさんなどを通じた体験会を実施し、展示会にも出品していますが、1社ごとのデモンストレーションでは限界があります。そこで4社合同での出張体験会を始めました。お客さまからすれば、いくつかふさわしそうなアシストスーツを試着してから選びたい、というのは当然のご要望ですから。

逢坂:一度に複数のタイプを気軽に試せるのは非常に有用な機会なので、さらに増えるといいですね。できれば自分の圃場で試せるとベストです。

右から逢坂さん、小山さん、高島さん
対談の様子。右から逢坂さん、小山さん、高島さん
高島:弊社のウェブサイトやフリーダイアルにアクセスいただければ無料で1週間程度の導入トライアルもできます。ウェブでのレクチャーも可能です。製品はホームセンターや家電量販店でも購入できます。

逢坂:若い就農者が未来の可能性を切り拓けるようになるためにも、農業は生産性向上と省力化、時間効率の確保を強く意識する業界になっていってほしいですね。アシストスーツの普及によって、それに貢献することを期待しています。

株式会社イノフィス製品の体験申し込みについては https://musclesuit.co.jp/lp/cm_2022/form/
電話での問い合わせ先 0120-046-505(平日 10:00〜18:00)


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