「家業から事業へ」をスローガンに業務改善を行い、梨の直販率を99%に上げた栃木県宇都宮市にある阿部梨園。その立役者として注目を受ける佐川友彦さんは、小規模農家では珍しい畑には出ないマネージャーとして、バックオフィスで経営改善を行ってきました。佐川さんの体験をもとに、主に人材活用や組織マネジメントを中心に、農家のための「現場でできる」経営改善ノウハウを聞いていくこの連載。第4回ではPRで工夫したことについて聞きました。
ポイント
・お客様や現場の目線で伝える
・SNSを利用して日本全国にファンを作る
・固定の
お客様や現場の目線で伝えることを考える
私が入社した当時の阿部梨園は、ウェブサイトにしても商品カタログにしても情報が不足しているように感じました。お客様からの注文時に認識が食い違うことが多く、繁忙期の業務をかなり圧迫していたのです。
そこで、まず商品カタログを作り直すことにしました。注文の仕方や商品ごとの違いなど、注文してもらう上で伝えておきたい情報を加えました。そこをしっかり手入れしてあげることで、お客様が商品を注文しやすくなり、私たちも商品の紹介や説明がスムーズになりました。
PRはどうしても思いの丈など自分たちが伝えたいことに偏ってしまいがちですが、お客様にとって必要な情報をきちんと伝えることが大切です。
今こんな品種が採れているとか、今年はいつ頃から販売が始まりそうだとか、今年の注文方法はこのように変わるとか。客観的な立場でタイムリーに情報をまとめることが大切です。
商品カタログは外注せずに、私が作ったので、内部の事情が現場目線で分かり、出荷作業時に判断が増えて苦労しないようになど意識して作ることもできました。お客様に上手に注文までの案内をしながら、自分たちの業務を減らすこともできたのではないかと思います。
SNSを利用
SNSについては主にFacebookで情報発信してきました。私が入社した当時の「阿部梨園」のFacebookページのフォロワー数は200件程でした。ほとんどが阿部の友達や常連のお客様でした。
それからちょっとずつフォロワー数が増えていき、今では2000件を越えました。そうなってくると、ある程度Facebookページで情報発信すれば一定のリアクションがあるとか、一定の割合のお客様に情報が行き届くことを見通しが立てられるようになります。そのあたりは随分時間をかけてベースを作ってきました。
結果的に県外のお客様がかなり増えました。注文伝票やWEBショップの受注データを見ると、明らかに他県の割合が増えましたね。これから先は地元の需要をがっちり独占するより、地理的な条件に限らず広く薄く、私たちの梨を召し上がってくださるお客様に提供したいと考えています。
ストック型とフロー型の情報発信を意識する
農業界全体を見ても、PRについて問題点を感じることのひとつは、情報が整理されていないことです。ウェブサイトやSNSで伝えたいことはコンスタントに発信されていますが、消費者が知りたい情報の発信が不足していることが散見されます。
ご自身で発信内容を書き上げている場合は、客観的な評価を受けることも大切です。ある程度、情報発信に詳しい人にお客様にとって必要な情報が網羅されているか、どうしたらもっと伝わるようになるか、アドバイスしてもらった方がいいと思います。
少なくとも必要なのは、農園の紹介、商品の紹介、商品へのこだわりや、差別化、お客様へのメッセージ。
直販をしている場合は、購入できる場所についても必要だと思います。これらは置きっ放しのストック型情報でいいと思います。
さらに、ブログやニュース記事など随時アップデートしていくフロー型の情報も大切です。
どうしてもどちらかに偏ってしまいがちですが、両方を準備して使い分けることが必要だと思います。