長引くコロナ禍で消費者の間で食生活が大きく様変わりしています。定期宅配サービスの商品開発に携わってきた食のプロは、ネットの検索ワードに注目すると、日々移り変わる消費者のニーズをとらえることができ、生産者が生き残る道だと教えてくれました。農産物、畜産物、水産物に続く総集編をお届けします!
ポイント
・グーグルトレンドは共有しやすい
・仕事の幅を広げよう
・パッケージデザインは重要
「Googleトレンド」で市場動向をつかもう
コロナ禍が及ぼした変化を、「グーグルトレンド」の人気ワードデータから、農産物、畜産品、水産品と順に追ってきたこの連載、今回は最終回です。
繰り返しますが、どんな生産品であれ、グーグルトレンドの「検索ワード」に注目して市場動向をつかみ、経営の方向性を定めるのが近道です。それは、グラフによってビジュアルで表現されているため、事実(ファクト)をイメージでとらえやすいうえ、数値化されている(定性・定量化)ことから、誰にでも説得力があり、チームで意思を一致させて、行動に移しやすいからです。
またデータは速報性があり、リアルタイムで変化していくため、これをもとに素早く行動に移すことができれば、結果は必ず付いてきます。やがて市場のなかで有利な立場を築くことができるはずです。
「メニュー」「レシピ」に注目し、加工まで手掛けよう
読者のみなさんは、さまざまな素材や加工品の生産を行っていると思うのですが、外食・内食いずれにせよ、「レシピ」通りに調理され、「メニュー」として食されたときに消費が完成されます。
忙しく時間に追われる現代では、このふたつの工程を代行することがサプライチェーン(調達・製造・販売・消費の流れ)の上流側のビジネスとなりますから、農家や漁業者も「生産」にとどまらず、仕事の領域を広げていったほうがいいのです。
コロナ禍で変化したのは、外食と内食の比率が後者に傾いた、というだけのことですから、変わった部分だけに対応するとよいでしょう。
内食傾向で品種開発も
内食化で変わる点について、先日、全国の農業研究者と議論する機会がありました。例えば、野菜の品種研究で言えば、いままでは加工用に、なるべく大きな品種の開発に力点が置かれていました。しかし、今後は家庭用の冷蔵庫に入るサイズの品種開発を中心にやっていったほうが良いのではないか、といった意見が目立ちました。このように、変化させたほうがよい部分を見つけて対応していく必要があります。
その一方で、「メニュー」は現状のままでよさそうです。いずれにしても、最終形である「メニュー」からさかのぼって、製造工程が合理化できる「レシピ」を考え、品種や部位を考えて行く、という重要度の順番こそ重要であり、生産者は「メニュー」に合わせた生産を行い、「メニュー」まで提供したほうが合理的です。
デザインや商品名で優れた「ブランド」作りを
世の中に良い商品・加工品はたくさんあります。一方で、売れない商品もたくさんあります。なぜでしょうか? それは「認知」されていない、つまり「有名」でないからです。
これには、まず人に取ってもらいやすく、名前も覚えやすくわかりやすい必要があります。認知が高くないと、インターネットで検索されることもなく、安値で取引されるだけです。
誰もが知っているタレントほど、ギャラが高いのと同じで、需要さえあれば、安定した品質で、長く繰り返し手に取ってもらい生活に密着していくことで、徐々に認知が高まってきますので、ここは諦めないことです。
「コバンザメ型」の小規模テイクアウト店に参入を!
今は直売所全盛です。つまり消費者は身近な生産者から、直接購入する意向を高めているのです。また高齢化により経験値が上がり、見る目も舌も肥えていますから、オリジナル性を高めた加工品を手掛けたら、自ら販売しましょう。
ネット通販もよいですが、小規模店舗のほうが、自分が住んでいる地域に貢献できる可能性が大きいです。地元のスーパーと持ちつ持たれつの存在が、一番ではないでしょうか?
前回の連載の畜産物編で触れた地方発の「テイクアウト唐揚げ店」の人気がこれを証明していますし、地元のスーパーに直接売り場を作ってもらった生産者ほど、素晴らしい経営成績を残しているのを目の当たりにしています。ぜひ優良な事例の真似をして、少しずつビジネスの領域を広げてみてください。
執筆者のプロフィール
阪下 利久(さかした・りきゅう)/オイシックス・ラ・大地株式会社商品本部技術開発部門リーダー◎青山学院大学経済学部卒業後、定期宅配サービスの「らでぃっしゅぼーや㈱」を経て、「オイシックス㈱」で青果開発マネージャー、技術開発担当、海外担当を歴任。有機・特別栽培、JGAPを中心とした農産物流通全般に26年携わる。