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今さら聞けないGAP認証 取得のメリットとは?

今さら聞けないGAP認証 取得のメリットとは?

GAP認証を迷っている農家は、取得にあたって、コスト面や管理面で負担が増えることを心配している人が少なくありません。農業経営を「見える化」することで、どんなメリットがあるのか?日本GAP協会では「事故が減って、販路が拡大し、社会貢献につながる」と話しています。

ポイント
・GAPで事故が減る
・安心雇用
・なぜ今なのか?



GAPのメリットとは?



前回、前々回の連載でも触れましたが、最終回はGAP認証を取得するメリットについて具体的にお話しします。

(1) メリット「管理が改善 事故も減少」

GAP取得のメリットは、第一に農場管理が改善され、農作業中の事故が減ることです。

例えば、あなたの農場では農薬や肥料などをどのように管理されていますか?
生産資材は、必要な時期に適切な量を使えるように計画的に購入することで、ムダな在庫を持つ必要がなくなり、ひいては生産コストを下げることもできます。

使用のたびに、いつ、どのくらいの量を使ったかを記録に残すことで、残留農薬検査の計画づくりに役立つし、農薬管理を担当する従業員の責任感や自主性の向上につながったと報告している農家も少なくありません。

一方、GAPの導入によって農作業事故の発生もおさえることができます。現在でも、年間およそ300人近い方が農作業中の事故で死亡していますから、事故を無くすことが優先です。

GAP導入の効果(政策基礎研究所「令和元年度GAP導入影響分析のための調査委託事業報告書」/農林水産省委託事業報告書より抜粋)

上の図は農林水産省が「GAP導入の効果」を委託調査した報告書から抜粋したものです。前述した「従業員の意識の向上」や「自主性の向上」にくわえて「販売先の信頼」、「アピール力の強化」など、GAP認証を取得した結果、さまざまな面で改善がみられます。
(2)メリット「SDGsへの貢献」

GAP取得の第二のメリットは、環境への影響が少ない農業のやり方を追求することで、社会に貢献できます。

GAP認証を取得した農場では、前述した農薬・肥料の適切な使用はもちろん、周辺環境への配慮、機械の燃料の管理などが厳しく求められています。

環境面だけではなく、従業員の労働安全はもとより、技能実習生や男女平等など、人権や福祉への配慮もカバーしています。さらに畜産分野では、家畜が生まれてから死を迎えるまでの間、快適性に配慮した飼育方法を行うこと(アニマルウェルフェア)についても、積極的な取り組みを進めています。

畜産分野では、家畜が生まれてから死ぬまで、ストレスをなるべく与えないような飼育方法が求められている


GAPとは、SDGsの目的である持続可能な社会を農業において実現するための、あらゆる条件を満たした取り組みだと言っても過言ではありません。

GAP認証は、雇用面でも安心の目印

GAP認証は「信頼できる雇用主」の目印


これから話すことは、当WEBサイトを運営しているYUIMEのような人材派遣会社のサービスにも関係してきます。今後、雇用先の農場が、GAP認証を取得しているかどうかは、サービスを受けるうえで大きな違いをもたらすからです。


ASIAGAP/JGAPの場合、「人権・福祉」が重要なポイントになっていて、特にASIAGAPではこのような賃金台帳などを活用して、きちんと雇用管理を行なっているかどうかのチェックが求められています。

雇用台帳(出典:日本GAP協会ホームページより

労働力の適切な確保(労働者の名簿があること、外国人労働者を採用する場合、在留可能かどうか確認していること)をはじめ、強制労働の禁止、使用者と労働者のコミュニケーションの実施(使用者と労働者の間での意見交換、交渉権の確保)、差別の禁止などが定められています。

さらにASIAGAPでは、労働条件の提示(条件を文書などで示しているかどうか?)、労働条件の遵守(労働時間、賃金などが適切かどうか?)ということも定められています。特にグローバル展開する企業では、特にこの点が重視される傾向にあります。

このことから、GAP認証を取得しているかどうかは、その農場が雇用面で信頼できるかどうか客観的に判断できる証明になると言えます。労働者側から見ても、GAP認証のあるなしが、安心して働ける農場の目印になります。

高齢化と人手不足という問題を抱える日本の農業界にとって、人材派遣サービスを受ける際にも、GAP認証は重要な意味を持つことになるのです。

農林水産省もGAPを推進


このようにGAPに対する注目が急速に高まってくるなか、政府・農林水産省も普及に向けて取り組みを加速させています。

特に注目されたのが、2017年5月に与党・自民党の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームが取りまとめた「規格・認証等戦略に関する提言」です。

この提言は、日本の農業の市場競争力を強化するための基盤として、東京オリ・パラ大会までに、GAPの指導員数を全国で1,000人以上育成したり、GAP認証の取得を3倍以上に増やすとか、日本発のGAP認証の仕組みをグローバルG.A.P.と同等の国際承認にするなどといった目標が取りまとめられています。

コロナ禍でオリ・パラ大会は1年延期となりましたが、自民党の提言では本来、2021年から2030年にかけては、国内のほぼすべての産地で国際水準のGAPを実施し、日本発のGAP認証がアジアで主流になることが目標となっているのです。

2021年現在は、まさにこの提言を実現するためのさまざまな取り組みが進められている真っ最中です。国もGAP認証を取得する農場を増やそうと、大規模な予算を組んで総合的に支援していますから、取得するかどうか悩んでいるなら、今がチャンスです。

これまでは、GAP認証を取得するコストや負担を考えると、及び腰になっていた人もいるかもしれません。しかし、農業経営を安定して持続させていくうえで欠かせない制度だとご理解いただけたかと思います。GAPは“農業を成功させるためのパートナー”です。これからも注目してください。


荻野 宏(おぎの・ひろし)/一般財団法人 日本GAP協会専務理事。東京農工大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。食糧庁企画課、畜産局牛乳乳製品課、総合食料局流通課卸売市場室、農林漁業金融公庫への出向などを経て退職。2014年に日本GAP協会に入り、翌年に事務局長、2021年4月から専務理事に就任。

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