前回の記事では、収穫後の果樹に養分を補ってやることで、エネルギーを失った樹の体力を取り戻し、来季への準備を効率的に進めるための肥料のやり方の基本を学びました。
この記事では収穫シーズン真っ盛りの温州みかんや、まもなく開花を迎えるビワを中心に、常緑果樹に対する施肥計画を取り上げます。
教えてくださるのは、日本熱帯果樹協会の理事を務め、南九州大学で果樹園芸学を研究・指導している前田隆昭先生です。
1 常緑果樹の代表、みかんの施肥を学ぶ
2 肥料の施用量を計算してみよう
常緑果樹の代表、みかんの施肥時期について学ぶ
温州みかんは9月頃から店頭に並ぶ極早生を皮切りに、早生、中生の収穫を終えて、これからは普通温州の収穫シーズンを迎えます。年明けから5月にかけては、中晩柑柑橘類の季節です。
そのため、これからは収穫と同時に、来シーズンの果実生産に向けた準備で忙しくなります。
温州みかんの枝の内部では、花(果実)になるのか、芽(枝)になるのかを選択する花芽分化が起こってきます。
みかんの生産にとって秋冬は、今年の果実(子)を収穫しながら、来年の花芽(母)を一緒に育てるための重要な季節にあたるのです。
ここでは、代表的な柑橘類の種類ごとに肥料を学びましょう。

実がなっている樹は、養分が少なくなっています。そこで秋肥を施用することで、樹勢の維持や、果汁成分の向上、冬期の耐寒性の向上、花芽分化の促進のほか、翌春の着花量増加などの効果が期待されます。温州みかんの早生品種であれば10月に、普通品種ならば11月という具合に、収穫時期の違いに伴って施用時期も異なります。
春肥(はるごえ)
一般的には、芽が出る(萌芽)直前の3月に施用します。新しい枝(新梢)の生育(伸長)を促し、幼果の肥大に効果をもたらします。
果樹類は、苗木を一度定植すると、その後、数十年間にわたって同じ場所で成長する永年性作物であるため、定植後は継続的に施肥していく必要があります。
これまでの研究によって、年間を通じて肥料をどの割合で施用すれば良いかについては、多くの果樹類で明らかになっています。
一例として温州みかんの早生品種に関する施肥方法についてご紹介します。

肥料の施用量を計算してみよう!
では次に窒素・リン酸・カリの含有率が8%ずつ含まれる「8:8:8」の肥料(30kg)を使って、10アールあたりに必要な施用量を計算してみましょう。
前回の記事でご紹介した計算式を使います。
目標とする窒素の成分量÷使用する資材が含有する窒素量×100
先の図によると柑橘早生の春肥は、窒素成分量8 kgが目標です。そして、使用する肥料が含有する窒素量は8%です。
したがって、上記▢の式に当てはめると、8÷8×100=100 kg
以上のことから、春肥として、肥料(N・P・K=8:8:8)を10a 当たり100 kg施用する必要があります。
基本的に、肥料の施用量を計算する際は、窒素を基準に考えるようにしてください。

秋肥の窒素成分量は、10アールあたり12 kgが目標です。施用割合は10%なので、上記の式に当てはめてみると、12÷10×100=120 kgとなります。
秋肥として肥料(N・P・K=10:10:10)を使った時は、10アールあたり120 kgが必要です。
今が旬のみかんにも、さまざまな品種が開発されています。ここからは、年明けから初夏にかけて登場する中晩柑品種の「清見オレンジ」の施肥基準をご紹介しましょう。

夏肥を施用するのは、①果実肥大の促進、②果汁成分の向上、③樹勢の維持が目的で、6月に行います。
最後は、柑橘と同じ常緑果樹ですが、バラ科のビワにも触れておきます。ビワは5〜6月にかけて収穫されますが、小さくて白い花が咲くのは11〜12月の冬の時期です。
そこで、春肥、夏肥、秋肥のほかに寒肥といって、10月下旬から11月上旬にかけて施肥する必要があるのです。

これから冬にかけてますます寒くなってきますが、果樹の内部では、来シーズンに向けて着実に準備が進んでいます。立派な果実が成るように、肥料や堆肥の施用を頑張ってください。
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