観測史上、世界的に「最も暑い夏」となった2023年。
国内でも不安定な天気が続いていて、農作物だけでなく、人間にとっても厳しい気候が続いています。
連日の猛暑とはいっても、地域によって気温差が大きく、このまま温暖化が食い止められなければ、今後、農作物の生育管理はますます厳しくなるでしょう。
和歌山県を拠点に、全国に向けた農機具の宅配レンタルや、通販サイトを展開する藤原農機の東直斗さんは今回、農業用ハウスの生育管理に欠かせない便利なアイテムに着目しました。
東さんがオススメする優れモノのハウスアイテム
・空気の循環で、ハウス内の温度ムラを解消!年間を通じて大活躍。スイデンの「すくすくファン」
・白いから明るい!でも優れた遮光・遮熱効果。ダイオ化成の遮光ネット「クールホワイト」
・点滴と散水、2つの良さを併せ持つ!住化農業資材の潅水チューブ「ネオドリップヨコシタ」
初期投資は大きいが、長い目で見たらメリットが大きいハウス栽培
夏の疲れが出やすいこの季節、読者の皆さんは体調などを崩されていませんでしょうか?
筆者の地元・和歌山県は、南国のイメージがありますが、8月の平均気温は東京よりも3~4度も低い地域です。
このように、地域によって気候の差が大きくなると、農作物の生育管理は今後、ますます難しくなってくるかもしれません。
今回は「生育管理」というキーワードに着目。農業用のビニールハウスに関連する用品をご紹介したいと思います。
施設栽培の代表的な作物は、トマトやナス、イチゴ、メロンなどが代表的ですが、ハウスで作るメリットといえば、天気や気候の変化による生育のばらつきを減らすことが筆頭に挙げられます。
パイプハウスならば、鉄骨ハウスに比べれば、比較的安価に建てられますが、それでも初期の設備投資はかなり大きくなります。
しかし、環境をうまくコントロールすれば、農薬をあまり使用せずに、病害虫の被害も減らせますし、1年を通じて美味しい野菜や果物を出荷できると考えたらどうでしょう? 5年、10年の長いスパンで考えたら、設備投資した分、大きな見返りがあるのではないでしょうか?
ハウス栽培では、「空調管理」「温度管理」「水分管理」の3つが重要だと私は考えているのですが、今回はそんな3つのキーワードから、ほかの生産者と差をつけられる可能性があるハウス用品をご紹介したいと思います。これから施設園芸に取り組もうという人も、ぜひ参考にしてください。
空気の循環でハウス内の温度ムラを解消!年間を通じて大活躍。すくすくファン
1つめのキーワード「空調管理」から、最初にご紹介するのが、スイデンの「サーキュレーター すくすくファン」です。扇風機のような形をしていますが、ハウス内の空気を循環させることが目的なので、直線状に風を送るサーキュレーター構造です。
夏場のハウスは、室温を下げるために、巻き上げ機などを使って側面のビニールをオープンにして、内部の換気を行います。一方で、冬場は加温機(ボイラー)で温度を上げるという作業が必要です。
ハウス全体の温度は、こういった方法で管理できますが、ハウス内でも場所や高さによって、温度や空気のムラができてしまいます。そこで、特定の場所で空気が滞留して熱気がこもらないように、空気を平均的に循環させることが重要なのです。
だったら、市販の扇風機やサーキュレーターでも十分なのでは?と考える読者もいるかもしれません。
ですが、価格が安い家庭用品はあらゆるターゲットのお客さん用に開発されていますから、ハウスのような特殊な施設内の空気を循環させるためには、性能面で少し物足りない部分があるのです。
その点、「すくすくファン」は、ハウス内の空気を循環させることを目的としたプロペラファンを採用していて、全体的な構造も、空気の流れを最も効率化するための専用設計です。市販品に比べたら値段は少し高くなりますが、農機具のプロとしてはやはりこういった専用の循環扇を使ってほしいところです。
「すくすくファン」のメリットは、夏場の局所的な高温対策や、梅雨時・冬場のハウス内の空気のよどみを解消するだけではありません。
空気の循環によって、作物の葉の表面にできる「葉面境界層」とよばれる空気のよどみを破壊することで、葉の裏にある気孔が開閉。これによって、光合成を促進したり、病害を防いだりすることが可能になります。
さらに、自然な風で葉と葉が接触し、刺激を与えることができますので、葉や茎が無駄に伸びる徒長を防止し、ハウス内の植物の生育を均一化させることも可能となります。
オプション品で動力噴霧器につなげることができる細霧ノズルもありますので、ミストを散布すれば、湿度の管理もある程度可能になります。
ふだん何気なく目にしている循環扇ですが、通気性の確保以外にも、さまざまな効力があります。ハウス内の空調管理に上手にご活用いただければと思います!
サーキュレーター すくすくファンSHC-35C-1/スイデン
外形寸法 台座幅52.2cm×台座部分×高さ49.3cm×奥行き24.8cm(ファン部分φ35cm)
本体重量 7.8kg
電源 100V
周波数 50Hz/60Hz
運転切替 強/弱
消費電力(周波数、運転の強弱で変わる)52W〜86W
1分あたりの最大風速(同上)71㎥〜88㎥
騒音(同上)56.5dB〜62dB
電源コード 長さ2m
運転可能条件 温度0〜40℃以下、湿度90%以下
付属品 取り付け金具各種とボルトセット
メーカー希望小売価格 4万4,000円(税込)
▼製品に関する問い合わせは製造元へ
株式会社スイデンお客様相談室 電話0120-285-240
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先
白いから明るい!でも優れた遮光・遮熱効果。ダイオ化成の「クールホワイト」
続いてハウス栽培の2つめのキーワード「温度管理」から、ダイオ化成の遮光ネット「ダイオクールホワイト」をご紹介します。寒い冬場は、加温機(ボイラー)でハウス内の室温を温めることはできますが、その反面、一度上昇した温度はなかなか下がりません。
これは人間と同じで、寒い冬は厚着することで調整できますが、夏は裸になっても暑いのと同じ理屈です。そんなときはハウスの屋根や巻き上げに遮光ネットを張ることで、太陽光をさえぎって室温を下げることができます。
一般に遮光・遮熱ネットというと、黒をイメージされるかと思いますが、「ダイオクールホワイト」は真っ白なのが特徴です。
黒い遮光ネットを張ったときのように、ハウス内が暗くなることはなく、明るいままなので、こんなので本当に光を遮断してくれるの?と疑ってしまいますが、その秘密は温度上昇防止剤を含むチタンホワイトにあります。
植物の生育には光合成が欠かせませんから、太陽光線の透過を調整して、明るさ(可視光線)を保ちながら、熱線(赤外線)はしっかりカットしてくれるので、優れた遮熱効果が期待できるのです!ハウスの中が明るいということは、手元の細かい作業も見えやすく、作業環境が爽やかなイメージになりますから、収穫体験などが売りの観光農園にも適しています。
一般的な遮光ネットと同じように、遮光率を25%~80%まで必要に応じて6段階から選べるラインナップになっています。また織物なので引っ張る力に強く、紫外線による劣化を抑える加工が施されているので、長期にわたって使用が可能です。
冒頭でも触れましたが、夏場の気温がこんなに高いと、施設栽培とはいえ、生育環境にも大きな影響を及ぼす可能性がありますから、ハウスの温度管理は、すぐにでも解決しなければならないと思います。
外気温を下げることはできませんから、遮光・遮熱ネットに頼る場面は、今後ますます増えてくるでしょう。温度管理のために作業環境を犠牲にするのではなく、どちらも両立できるダイオクールホワイト、ぜひ一度気温の上昇でお悩みの方はお試しいただければと思います!
ダイオクールホワイト/ダイオ化成株式会社
このほか、家庭菜園用のパック品なども展開。
▼製品に関する問い合わせはお客様相談室まで
株式会社イノベックス 電話03-3547-6117
問い合わせ先メール https://www.innovex-w.co.jp/contact/
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入先
点滴チューブと散水チューブ、2つの良さを併せ持つ「ネオドリップヨコシタ」
3つめのキーワード「水分管理」から、住化農業資材株式会社の「潅水チューブ ネオドリップヨコシタ」をご紹介しましょう。ハウス栽培のメリットのひとつが、作物の生育が天候に左右されにくいという点です。
言い換えると、雨が原因の生育不良などが起こりにくいということ。長雨の影響はもちろんですが、今年の夏のような日照り続きの場合には、渇水の深刻な影響を受けにくいということになります。そのため、潅水(水やり)も機械的に対応できるのです。
一般的には、潅水チューブと呼ばれる、塩化ビニールやポリエチレン樹脂製のホースに、一定間隔で孔をあけたものを圃場に張り巡らせて水やりをしますが、一言で潅水と言っても、さまざまな方法があります。
例えば、点滴灌水は、チューブにあいた点滴孔から、水滴をポタポタと垂らすことで土壌に水分を与えます。点滴チューブを作物の株元に配置することで、必要な水量を、ムラなく均一に与えることができる効率的な方法です。
液肥などの活用もしやすいので、生育が良くなることが期待されますが、一方で肥料散布のように地表面に水を撒くことが必要なときは、散水での潅水の方が良い場合もありますので、どちらの潅水方法を選ぶかは悩みどころです。
点滴チューブと散水のどちらの良さも兼ね備えているのが、「ネオドリップヨコシタ(02L/04L)」なのです。点滴のような下向きに落ちる水と、上面から水平散水が同時にできる優れモノ。
でも、両方向から散水するとなると、水を大量に使ってしまうのでは?と心配になりますよね?
この灌水チューブは従来品とは異なり、内部に仕切りが組み込まれた独自の二重管構造になっているので、効率よく無駄のない散水が可能です。
散水幅は片側20cm以内におさめることができるので、必要な範囲内に低水量で散水できるので安心ですし、畝間の通路潅水などにも向いています。また、先端から末端までの散水開始時間のタイムラグが短いという特長もありますので、末端まで均一に潅水できるところも大きなメリットのひとつです。
ネオドリップヨコシタ(02L/04L)/住化農業資材
ホース相当径 18mm
散水孔間隔上孔 02L:20cm、04L:10cm
散水孔間隔下孔 02L:20cm、04L:20cm
散水孔径(上面) 02L:φ0.35mm、04L:φ0.4mm
散水孔径(下面) 02L:φ0.35mm、04L:φ0.5mm
散水幅 〜0.4m
散水量 02L:1分あたり〜0.15L/m、04L:1分あたり〜0.35L/m
材質 黒色特殊ポリエチレン
販売価格(末端標準価格) 200m巻で1万3,000円(消費税・送料別)
▼製品に関するお問い合わせは同社灌水資材製品情報サイトまで
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」購入先
今回は、ハウス栽培の道具を選ぶうえで、「空調管理」「温度管理」「水分管理」の3つの視点から商品をご紹介しました。
ふだん何気なく行っている作業も、資材をちょっとだけ変えれば、同じような条件で生産しているほかの人とは一味違う畑になること間違いなしです。
逆に言うと、そのちょっとの変化で大きく条件が変わってしまうのですから、農業とは繊細な仕事だとも言えますが、資材選びにこだわることで、品質や収量にムラのない、効率的な作物づくりを目指していただければと願ってやみません。