果樹はもちろん、草花の園芸でも欠かせない剪定ばさみ。
ひと昔前の通販番組では高枝切りはさみが定番でしたが、人力で作業する草木の剪定は、いかに疲労やストレスが軽減できるかが、製品選びのポイントになりますが、プロ・アマに関わらず、そこはおざなりという人も…。
藤原農機の東直斗さんは「ひんぱんに使う農機具だからこそ、自分なりのこだわりを持つべきだ」として、農機具・資材選びのプロならではの視点で、3アイテムを紹介してくれました!
東さんがオススメする優れものの剪定ばさみ
・全国5000人が選んだバッテリー式電動ばさみの革命児!和光商事のVineP32nova
・太枝タイプなのに高枝にも対応!生木が0.5秒でスパッ!ニシガキ工業の太丸充電プロS
・はさみを置かずに、両手で収穫できるから効率アップ!サボテンの両手が使える収穫鋏
日々進化する剪定ばさみ。選び方のコツを伝授
和歌山県を拠点に、「全国向けの農機具の宅配レンタル」サービスを展開している藤原農機で、通販サイト「アグリズ」を運営しています!
YUIME編集部から、フツーの農機具屋さんやメーカーとは異なる視点で、農機具をオススメしてほしいというリクエストを受けて始めたこの連載も今回で8回目。
これまでは、季節や時期に合わせて、比較的サイズの大きな農機具を中心に紹介してきましたが、今回のテーマは「鋏(はさみ)」。
今年は気候も不安定で、気温も上下しやすく、作物や園地の管理が大変だ…とお悩みの読者も多いと思いますが、今回は雨が降ろうが、槍が降ろうが、どんな時でも体のそばから離せない農家の必需品です。
剪定ばさみは、ハウス・露地に関わらず、果樹や草花、植木の世話まで、季節を問わず、さまざまな現場で大活躍。
さんざん迷った末、「とりあえず、以前使っていたものと同じでイイや」と諦めてしまうところですが、日常的に使うからこそ、こだわって選んだ道具で作業すれば、生産性がアップすること間違いなしです!
最近はバッテリーを搭載した充電タイプや、高枝タイプのほか、特定の用途に合わせたユニークな剪定ばさみなど、各メーカーからどんどん新しい商品が開発されています。
そこで、今回は農機具のプロの視点で見た「はさみ」について、3つの商品を深掘りして解説しす!「よそとはちょっと差をつけたい!」「自分なりのこだわりを持ちたい!」と思っているアナタには必ず役に立つはず。
全国5000人が選んだバッテリー式電動ばさみの革命児!和光商事のVineP32nova
まずご紹介したいのが、和光商事のバッテリー式の電動剪定ばさみ「Vine」シリーズです。電動ばさみといえば、以前は数十万円はくだらなかったのに、この10年間くらいで、一気に低価格化が進みました。さらにここ数年で、海外製の安価な製品は販売されるようになったことで、爆発的に普及が進んでいます。
一口にバッテリータイプと言っても、値段はピンキリで、製造元をたどれば同じメーカーだった!というケースも珍しくありません。2023年現在の電動ばさみの市場は、とにかく種々雑多なブランドの製品が入り混じっていて、「何を選んだらいいのか皆目見当がつかない!」といった具合です。
どんな業界でも、新しいジャンルの製品が登場した時は、後発商品の乱立によって、カオス状態に陥りがちです。こういう時期に起こりがちなのが、ネット通販で安物を買ったら、数回しか使っていないのにすぐ壊れたというトラブルです。
今回ご紹介するVineシリーズは、ちまたに出回っている“安物”の電動ばさみに比べると、値段は張りますが、2021年の発売以来、これまでに累計5,000台以上の販売実績があります。単純計算すると、5,000人以上に愛用されている、電動はさみの新たなスダンダードになりつつあるのです!
弊社でも、多くの台数を販売しています。見た目は他社製品とあまり変わらないようですが、我々プロの目は誤魔化されません(笑)。高価格帯の製品と安物には、「部品の精度」の面で大きな違いがあるのです!
藤原農機がある和歌山県は、柑橘類の生産者が多いので、日ごろから「やっぱり安物はアカン!」なんて愚痴をこぼすお客さんと顔をつき合わせる機会が少なくありません。
剪定ばさみだけでなく、価格の安い製品は外から見えない部品のコストを削っているケースが多く、耐久性に難があったり、ロットの違いで品質のバラつきがあることも目立ちます。
安いからダメというわけではなく、技術の革新によって、低コスト化を実現させた農機具ももちろんあります。逆に言えば、価格の高さは、そのまま精度の高さとイコールではなく、製造工場の都合でただ高いだけ…という場合もあるので、そこは一概には言えませんが、その点、このVineシリーズに関しては、品質・性能ともに安心してオススメできるバッテリータイプの電動ばさみの代表です。
本体の重さはバッテリー込みでわずか1,030g。最初からバッテリーが2個同梱されているので充電待ちのストレスがありません。しかも1時間の充電で4時間の作業が可能なうえ、わずらわしいコードやエアホースを使わないので取り回しが自由です。
液晶パネルで切断回数や電池残量も確認できますし、切断できる枝の太さは直径30mm程度まで対応可能。それより細枝を切りたい場合は、開口部を好きな位置で調整して狭くできますから、現場の状況に合わせて剪定作業のスピードアップも期待できます。
そのほかにも、細かい性能として、防水性能を表すIPXは「4」と、生活防水の品質が保証されていますので、散水スプリンクラーの水に濡れたせいでバッテリーや基盤が故障する可能性も低いです。
人間工学に基づいて設計されたグリップなので疲れにくく、トリガーを軽く握ればモーターが力強く動くので、スパッスパッと切断できますから、1日中作業していると「手が痛くなる」「腱鞘炎がつらい」という方はもちろん、安物ではなくしっかりしたものを使いたい、というプロにぜひオススメしたいです。
Vine P32 nova/和光商事株式会社
開口32mm(無段階開口径設定可能)
切断径30mm程度
スリープモード搭載
IPX4 生活防水安全ガード機能付き
本体+バッテリー2個付き 税込9万6,800円
▼製品に関する問い合わせ先
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」での購入ページ
太枝タイプなのに高枝も。生木が0.5秒でスパッ!ニシガキ工業の太丸充電プロS
続いてご紹介したいのが、太枝切りタイプの「太丸(ふとまる)充電プロS」です。ニシガキ工業の「太丸」シリーズといえば、太い枝を切りたいという農家さんには、真っ先にオススメしたい商品のひとつ。剪定ばさみの市場では、大ベストセラー商品です。
そんな太丸シリーズのなかでも、近年はバッテリータイプが人気を集めています。しかも、この「太丸充電プロS」は、本体の長さが0.75mから2mまで4サイズで展開。最適な高さで枝を切ることができます。
最近では、バッテリータイプの高枝切りはさみが増えてきているのですが、ほとんどがハンディタイプに延長ポールを取り付ける仕組みです。
そのため、先端が重く、両手で持ち上げて作業しにくかったり、先端部分のはさみと、手元のモーターの距離が離れすぎているので、はさみの開け閉めに時間がかかって使いものにならなかったりと、ニーズはあるものの、規制の製品には一長一短があります。
この「太丸充電プロS」シリーズは、バッテリータイプの高枝切りはさみにこれまで持たれていた問題を解決するために、バッテリーは腰ベルトに取り付けて作業時の負担を大幅軽減。
そのうえ更に、切断スピードを0.5秒(戻りも含めて1秒)と、作業スピード化を実現しています。太丸充電プロSの“S”はスピードのSを示しているのですね。切断できる枝の太さは、樹木の種類や刈刃の切れ味によって異なりますが、生木なら直径約27mmと、高枝タイプにしてはパワーもあって、かなりの太さの枝も切断可能です。
気になるのがバッテリーの持続時間です。
バッテリー式のはさみやチェンソーの場合、常に稼働させ続けるわけではないので、連続稼働時間ではなく、「何本切れるか?」を目安にすることが多いのですが、太丸充電プロSは、1回の充電で、27mmの生木を約6,000本切断できる計算ですので、果樹の剪定など、プロの現場でも十分に活用できそうです。(※参考数値)
0.75m・1.0m・1.5m・2.0mと、ポール部分は4つの長さから選べるようになっていますが、いずれもポールが伸縮するタイプではありませんので、注意が必要です。
バッテリーはどれも共通ですから、プロの現場で使うのであれば作業に応じて短いものと長いもので2種類用意しておくのも、ちょっとしたこだわりのひとつかもしれませんね。
太丸充電プロSシリーズ/ニシガキ工業株式会社
バッテリー・充電器付き 本体サイズ(cm) 本体重量
0.75mモデル 73×16.2×5.6 1.74kg
1.0mモデル 98×16.2×5.6 1.86kg
1.5mモデル 148×16.2×5.6 2.00kg
2.0mモデル 198×16.2×5.6 2.19kg
モーター定格電圧 ブラシレスモーターDC14.4V
消費電力 240w
モーター寿命 5,000時間以上
メーカー希望小売価格(税込、いずれもバッテリー・充電器付き)
0.75mモデル─7万2,600円、1.0mモデル─7万4,140円、1.5mモデル─7万6,450円、2.0mモデル─7万9,530円
▼製品に関する問い合わせは同社ホームページまで
メーカー公式サイト
▼藤原農機「アグリズ」購入ページ
はさみを置かずに両手で収穫できて効率UP!サボテンの両手が使える収穫鋏
サボテンは、神戸市の北西に位置する兵庫県三木市の園芸製品メーカーです。三木市は日本で最も古い鍛治の町として知られ、現在も金物製品が特産物です。
サボテンさんも、ぶどう専用や、アスパラ収穫専用のはさみなどの、特定の用途に役立つ他とは一線を画す便利な製品がラインナップに並びます。今回ご紹介する「両手が使える収穫鋏」も、とても特徴的な形をしていますよね?
この製品は、指を通す部分がピストルのような形状をしていて、コイルバネがついたトリガー(引き金)部分を、親指で押さえることで剪定や収穫できます。人差し指と中指は、オレンジ色の丸い部分に通してはさみ本体を支える仕組みになっています。
わき芽や果実の茎を切った後、そのまま人差し指と中指を掛けたままにしておけば、いちいちはさみホルダー(ホルスター)などに入れなくても、両手がフリーになるので、作業スピードが格段にアップします。
ここまで最新機器のバッテリータイプの剪定ばさみを紹介してきましたが、最後にこれを選んだ理由は、この連載でいつも説明している「少ない投資で大きな効果を生む」という考え方にピッタリだと思ったからです。
「剪定時にはさみをホルスターから出し入れしながら、その都度、持ち替える」「両手が使えないので、片手で無理して作業する」……、文字でみると大したことのない単純な動きに思えますが、農作業の場合、これを毎年、何百回、何千回と繰り返すのです。
1回の作業に3秒かかるとしたら、100回だと5分のロス、1,000回だと50分のロスになります。まさに“塵も積もれば山となる”です。しかも、時間のロスだけならともかく、肉体的には、同じ負荷が1,000回分かかっていると想像したらいかがでしょうか?
2,000円前後の出費で、そのストレスから一生逃れられるとしたら、どうでしょう?投資対効果で言ったら、何百万円もする高価な農機具を1台買うよりも、よっぽど価値があることだと思います。
ステンレス両手が使える収穫鋏(農家用)No.1318-S/株式会社サボテン
本体価格 2,200円
▼商品に関する問い合わせ先
メーカーの公式サイト
直営ショップ
▼藤原農機「アグリズ」購入ページ
今回、ご紹介した剪定ばさみは、いずれも“ちょっとしたこだわり”が劇的な作業効果を生みだすものばかり。この機会に、手の延長として、ふだんからよく使う「はさみ」の使い方を今一度見直してみてはいかがでしょうか?