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Editor's Eyes 選び方しだいで収益倍増 東直斗の「稼げる草刈機を選ぶ」

Editor's Eyes  選び方しだいで収益倍増 東直斗の「稼げる草刈機を選ぶ」

「農機具のプロがオススメする優れモノ」を担当していた東直斗さんがパワーアップして帰ってきました!

東さんは、和歌山県の藤原農機で農機具通販サイト「アグリズ」を運営していた専門家として、農機具業界では知られた存在ですが、最近、子会社を設立して経営コンサルタントとしてもキャリアをスタートしています。

お客さんと接するなかで「これ買ったら本当に経営が良くなるの?」という直球の質問を受けることもしばしば。新たにスタートする本連載では、メーカーサイドや販売店ではなかなか答えにくいこの質問にスルドく切り込んでいきたいと思います!

この記事のポイント
・農業と経営の2つを経験した強みを活かして
・草刈機ってたくさん種類がある
・草刈り時間が短くなると、利益はどう変わる?
・作業効率を上げて、何をする?
・利益につながらなければ効率UPは意味がない
・「作業の楽さ」ってどこまで追求すべき?
・長く農業経営するためのお金と時間の使い方

農業と経営の2つを経験した強みを活かして


和歌山県みなべ町を拠点に、地方企業の経営者向けの研修や経営支援を行っている株式会社クリアーの東直斗です。

こう挨拶すると、「なーんだ、経営コンサルタントってやつか」と思われる農家もおられるでしょう。私の経歴でちょっと変わっているのは、システム開発の企業を経て、農機具販売会社で10年働いたことです。

藤原農機では、農機具の修理や販売、物流センターの運営に加えて、当時は競合他社があまりやっていなかった「農機具の宅配レンタル事業」を立ち上げました。

これまでの経験を活かして、農家や農業現場の支援をしようと、2023年に藤原農機の100%子会社である「クリアー」を立ち上げました。

2023年は「プロが教える農機具の選び方」という連載を毎月続けてきましたが、今回から内容をパワーアップして、2倍儲かる農機具の選び方をお伝えしていきます。

農業と経営の2つの現場を知っている強みを活かして、農機具選びに迷う経営者に向けて、日ごろはお答えしにくい疑問に答えていきます。

第1回のテーマは「草刈機」。農家の必需品なので、ふだんから手に取られる方が多いと思いますが、なにげなく選んでいる草刈機でも、視点を変えれば大きな利益を生み出す可能性を秘めているのです!

草刈機ってたくさん種類がある

「草刈機」と聞いて、皆さんがまずイメージするのはどんな形状でしょうか?

肩にベルトをかけてスティック状の作業機を左右に振り回す「刈払機」なのか、ゴーカートのように人が乗って走る「乗用草刈機」なのか、作業機のハンドルを人が握って歩く「自走式草刈機」や「ハンマーナイフモア」なのか、リモコンで動く「ラジコン草刈機」なのか、人によってイメージはバラバラです。

実は、これらはすべて「草刈機」と呼んで差し支えないものです。

一般的な刈払機はスティックの先に円盤状の刃を取り付けて使う
一般的な刈払機はスティックの先に円盤状の刃を取り付けて使う(モデルは東さん/藤原農機撮影)
大きく分けると、日本には「刈払機(Brush Cutter)」タイプと、乗用タイプや自走式タイプのようなその他の「自走式草刈機(Mower)」の2つの区分に分けることができます。

このほかに「芝刈機(Lawn Mower)」もあります。ゴルフ場や公園などの芝生を刈ることに特化して開発されているため、メーカーは通常の雑草刈りにはオススメしていません。そのため、農業現場で「草刈りしなきゃ」という場合、基本的には芝刈機が選ばれることはありません。

先に紹介したさまざまな草刈機について、それぞれのメリットを比較してみましょう。

1:メリット〜パワーの乗用・自走式と小回りの刈払機
乗用・自走式草刈機は、エンジンで動くのでパワーがありますし、機械を持ち上げる必要がないので広範囲の草刈りを“楽”に、"素早く片付ける“ことができます。

一方、刈払機は作業者が背負って使うので、人が踏み込める場所ならどんな環境でも草刈りできる”小回りの良さ”が魅力ですし、”メンテナンスしやすい”というイメージがあります。

2:タイプ別のデメリット〜金額の違いで作業性も変わる

その反面、乗用・自走式草刈機は購入金額が30万円〜100万円を超えるものまで高価格帯のものがほとんどです。

刈払機は、比較的手ごろな4~5万円台でも買えるのですが、人間が持ち上げて動かすので機械の重さで体力を消耗します。作業にも時間がかかるので面積の広い場所だと大変です。

「農業は草刈りに始まり、草刈りに終わる」という言葉があるくらい、春から秋にかけて草刈りに追われます。農業のなかでも、栽培や収穫よりも作業量を占めるものです。

藤原農機のお客さんでも、自走しながら雑草を粉々に砕いてくれるハンマーナイフモアを検討している方も少なくありません。

その際に、「補助金を使えないか?」とか「作業効率」について相談を受けることはあるのですが、検討にあたって、私がオススメしたいのは「購入したら、利益がどう出るか?」という経営的視点です。

草刈り時間が短くなると、利益はどう変わる?


「作業効率」と「利益」という2つのキーワードを挙げました。言い換えると、「いかに早く、少ない労力で、作業を進められるか」というのが作業効率で、売上から原価や人件費など諸経費を差し引いたものを便宜上ここでは利益と呼びます。

そう考えたとき、作業効率を高めるには大型の機械を買いたいし、利益を増やすためにコストもかけたくないし……と悩む場面に遭遇します。

実際に経費を押さえながら、作業効率をアップするという考え方で工夫をされている経営者もたくさんいますが、これら2つのキーワードは相反して見えます。

では逆に、「経費をかけて、さらに作業効率を上げることで、利益を増やす」という考え方についてはいかがでしょうか?

遊園地のゴーカート感覚で運転しながら草を刈れるパワフルな乗用草刈機
遊園地のゴーカート感覚で運転しながら草を刈れるパワフルな乗用草刈機(藤原農機撮影)

作業効率を上げて、何をする?

農業において、土づくりや育苗、植え付け、収穫などと比べて、草刈りでは、いくら刈っても売り上げが増えたり、コスト削減や利益アップにつながるということはありません。

しかし、こう考えてみたらいかがでしょう?

キレイに草刈りすることで、病害虫を防除したり、イノシシやシカなどといった野生動物の侵入を防ぐことができます。被害が減って、秀品率が上がり、収穫量が増えるので、間接的な形で、草刈りは農業経営の利益に結びついているのです!

電気柵
鳥獣害対策として設置した電気柵の周辺も草刈りが必要だ
また作業効率が良くなって、自由に使える時間が増えれば、販路開拓などほかの業務に時間をかけられるようになります。こちらも利益に直結していますが、既存の販路と出荷量を維持するタイプの経営であれば、大きな影響はないかもしれません。でも、そんな経営者はほとんどいないですよね。

利益につながらなければ効率UPは意味がない

ひと言で「作業効率UP」と言っても、利益はどうか?といった視点で検討してみましたが、これも、一人ひとりの農家によって作業環境が異なりますから、一律では言えないかもしれません。ただ、共通するのは、「利益につながらないのであれば、作業効率の向上はあまり意味がない」という点です。

つまり、草刈機を導入して作業効率を向上させたいなら、ただ作業時間を短縮するだけで満足せずに、その後に何をするのか?という部分とセットで考えるべきなのです! 設備投資の基本的な考え方とも言えるでしょう。

さらに言えば、例えば草刈りに年に20日間かけるという農家が、30万円の草刈機を買ったとします。

新しい機械を導入したおかげで、作業時間が10日間に短縮できた場合、「30万円かけて10日分の時間を買った」と考え方ができますね。では、草刈りのアルバイトを日給1万5000円で雇った場合、どうでしょうか?

時間あたりのお金に換算してみたら、どちらの方が儲かりそうか、という点が見えてきます。これまで予算と機能で悩んでいた農機具の選び方が変わってくるのではないでしょうか?

「作業の楽さ」ってどこまで追求すべき?

草刈機の「作業効率」と「利益」について考えてきましたが、もう一点忘れてはならないのが「作業が楽かどうか?」という点でしょう。

刈払機の場合、軽量タイプとパワーがあるものは両立しないことがほとんどです。そのため、体に負担が少ない軽量タイプで時間をかけて作業をするか、パワーのある機械で一気呵成に片付けてしまうか、という二者拓一になります。

どちらが楽かは人それぞれ。若くて体力に自信があるなら、パワータイプを選ぶでしょうし、女性や高齢者なら軽量タイプの方が扱いやすいかもしれません。

作業効率や利益について掘り下げると、「楽に仕事したい」と考えることが、なんだかダメみたいと気後れするかもしれませんが、そんなことはありません!!

前述の設備投資の考え方にあてはめてみると、「10日間の休みを得るために、30万円投資する」という考え方はとても重要です。1年間365日働いて利益を出すよりも、100日勤務で同じ利益が出せる方が絶対に良いはず。家族経営の農家の場合、農業利益を考えるとき、人件費について見落としがちです。

自走式草刈機
自走式は刈刃で雑草をハンマーのように叩きながら刈り取っていくことから、ハンマーナイフモアとも呼ばれる(藤原農機撮影)

長く農業経営するためのお金と時間の使い方


そのために考えるべきことは、「何のために作業効率を上げるのか?」という点です。

効率が上がった/下がったから良い・悪いではなく、設備投資したことで得られた利益や時間を何に使うのか?をまず考えなければいけません。

この場合、何が良くて、何が悪いのかは、経営者によってそれぞれ異なります。設備投資の結果、獲得した利益はお金でも時間でも良いし、働く人の笑顔でも健康でも、なんだってOKなのですから。

ただし意識してほしいのは、これらはどれかひとつだけを追求しても成立せず、どれかが必要量に達していなければ、いずれ経営破綻をまねいてしまうという点です。

皆さんができるだけ長く農業を続けるためにも、今一度、ご自分の農園を振り返って、お金と時間の使い方の関係について考えてみてほしいと思います。

ちなみに、この文章では便宜上、「利益」という言葉を使っていますが、30万円以上の農機具は「資産」とされます。経費として一括で計上できないため、減価償却費が年間の経費となります。今後は、農業経営における“利益”と”収支“が異なるということも、お話ししていきたいと思います。

耕運機や収穫機に比べると、生産・栽培に直結しない作業のため、これまでは「たかが草刈り」と深く考えてこなかったかもしれません。

でも先述の言葉通り、農業においては常につきまとう「されど草刈り」という作業なのです。

このコラムで草刈機を選ぶ視点がすっかり変わった方もいるかもしれません。

農機具選びのときは、価格や機能の比較に加えて、「これを買ったらどんな価値が得られるか?」をぜひ考えてくださいね。次回もお楽しみに!

この記事の執筆

東 直斗
ITエンジニアとして5年のキャリアを積んだ後、和歌山県の農機具専門会社「藤原農機」で10年にわたって、農機具の修理・販売から、国内最大級の農機具ECサイト「アグリズ」を運営し、農機具の宅配レンタルサービスを立ち上げる。2023年10月、藤原農機の100%子会社「クリアー」を設立し、農業をはじめとする小規模事業者の支援を開始


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