インタビュー

今さら聞けないGAP認証とは?GAPはひとつじゃない!

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の選手村で出される食材の調達基準となったことで、一躍注目されることになったGAP認証制度ですが、実はただひとつではありません。いろいろな運営元や異なる考え方にもとづいた制度が日本をはじめ、世界中にあります。グローバルGAPのほか、アジアや日本の農業条件や環境に合わせて独自に生まれた制度があるのです。違いを押さえておきましょう!

ポイント
・GAPはいくつある?
・食の安全・信頼回復
・GAPによる付加価値

GAP認証、それぞれの違いとは?

前回の連載でお話ししたように、GAP認証制度とは、一言で言えば、農産物の生産者と流通・消費者の両者が「信頼できる農場で作られた良い農産物」だと見分けるための目印です。

現在、日本国内で普及しているGAP認証制度は、ヨーロッパから世界に発展した「GLOBALG.A.P.(グローバルGAP)」と、これを参考にして日本で確立したASIAGAP(アジア・ギャップ)、JGAP(ジェイ・ギャップ)の3つが中心になっています。

いずれの制度も、これを取得した農・畜産物は、①食品としての安全性、②環境保全に配慮して生産されたもの、③労働する作業者の安全が守られていると保障されたものとして、2020年東京大会の選手村で提供される食材の調達基準に位置付けられています。

国内におけるさまざまなGAP

国内におけるさまざまGAPの違い(農林水産省「GAP(農業生産工程管理)をめぐる情勢」より抜粋

しかし、GAP認証制度はこの3つだけではありません。

都道府県や企業などが独自に運営するGAPもあります。しかしこれらは第三者機関による認証のしくみを持っていないか、持っていたとしても、国際的に通用するISO規格のレベルには達していない簡易なものが、ほとんどです。

グローバルGAPって何?

グローバルGAPは、ヨーロッパの大手小売業の調達基準として普及した制度です。ヨーロッパ内外からヨーロッパ各国へ輸出を行う農場を中心に、世界では約20万、日本では669農場(2020年3月末時点)が認証を取得しています。認証の大部分は、青果物ですが、このほかにも穀物、茶、花卉(き)、家畜、水産養殖などを幅広くカバーしています。世界に目を向ければ、北米で普及しているSQF(食品安全システム)、カナダGAPのほか、アジアではKoreaGAP、台湾のGAPとトレーサビリティー制度を組み合わせたTAP、タイのQGAPなど、それぞれの国や地域にGAP認証制度があります。

JGAPと(家畜衛生とアニマルウェルフェアは家畜・畜産物のみ)とASIAGAP

JGAPと(家畜衛生とアニマルウェルフェアは家畜・畜産物のみ)とASIAGAP

JGAPとASIAGAPの違い

JGAP(青果物、穀物、茶、家畜・畜産物)とASIAGAP(青果物、穀物、茶)は、日本GAP協会が運営する日本発のGAP認証制度です。

JGAPは、世界に通用する日本の本格的な第三者認証制度として2006年に運用が始められました。ASIAGAPは、前述のJGAPにグローバル企業からの要求を付加する内容で、2016年から運用されています。2020年3月末時点における認証農場数は、国内でJGAPが4,315農場、ASIAGAPが2,379農場に達しています。

食の安全に対する信頼回復のために

ここで話は少し横道にそれますが、1990年以降、 BSE(牛海綿状脳症)と言って、牛の脳の組織がスポンジ状になり、死亡する病気が世界的に広まった事件がありました。原因は、死んだ牛の脳や脊髄を原料にしたエサを食べたことだと考えられています。またこの時代は、農産物によって多数の死者が出た食中毒など、世界中で食品の安全性をめぐる問題があいつぎました。

そこでコカコーラやネスレ、マクドナルドなどといった大手食品メーカーや流通業者によるネットワーク「GFSI(Global Food Safety Initiative)世界食品安全イニシアティブ」が設立され、すべての消費者に安全な食品を届けることを目標に活動を開始。

食品の安全やそのためのノウハウなどは、企業同士の競争分野でもありますが、GFSIでは「食品流通のグローバル化が進むなかで、食品安全の問題は“非競争分野”として業界全体で取り組む必要がある」という考えから生まれたのが、食品安全規格の評価・承認(ベンチマーキング)です。

当時、世界には約400もの食品安全関連の規格があったことから、メーカーや生産者は取引先の監査に追われる状況下にありました。そこで、一度認証されれば、世界のどこでも通用する第三者認証の必要性が高まったというのが背景にありました。

畜産分野では?

先ほど、BSE問題について触れましたが、畜産分野においても客観的な第三者認証を求める声が高まり、日本では2017年にJGAPが運用を開始しています。乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、肉用鶏を対象にしていて、2020年3月末時点で、200近い農場が認証されています。

GAP認証に取り組むためには

前述のASIAGAPとJGAPを運営しているのは、私たち日本GAP協会です。ふたつの認証プログラムの開発をはじめ、研修制度の運営、普及活動などを行なっています。ここではGAPの導入方法について具体的にご紹介しましょう。

1まず基準書を手に入れよう!

ASIAGAP、JGAPともに、「基準書」という誰でも無料でダウンロードできる文書に、認証の取得に関するすべての基準やルールがまとめられています。

具体的には、青果物、穀物、お茶と、生産品目ごとに農場が守らなければならない管理点などが基準書にまとめられていて、JGAPには、上記に加えて家畜・畜産物の基準書が揃っています。また、それぞれに解説書や参考資料も掲載されていますから、これから認証取得を計画している経営者は、まずはこちらを確認してみてはいかがでしょうか?誰でも無料でダウンロードできます。

2個別認証と団体認証

先ほど経営者と述べましたが、認証の取得にあたって、個人農家(個人事業主)や農業生産法人と、複数の経営体が集まった団体や複数の農場を管理している企業があります。

前者は「個別認証」となりますが、後者の「団体認証」の場合は、団体事務局用の基準書にもとづいて、運営ルール(団体の管理マニュアルの策定などをはじめとする管理体制の確立や内部監査など)を整えて、団体を運営する必要があります。団体認証は、事務局と農場でGAPの取り組みの役割分担を行うことで、個々の農場の負担を軽減することが可能です。
基準書の構成

3基準書の構造

それぞれの基準書は、①経営の基本、②経営資源の管理、③栽培工程における共通管理の3つの構成から成り立っています。さらに、それぞれの下に、生産工程における食品安全に関するリスク管理やトレーサビリティー(生産から流通履歴)、人権・福祉と労務管理、労働安全管理、周辺環境への配慮、農薬・肥料等の管理などの項目が並ぶ形となっています。

さらに、その下にGAP認証の具体的な取り組み内容で、かつ審査段階での評価の対象となる具体的な適合基準が記された管理点が合計110~160項目程度並びます。

基準書

GAP認証を取得するにはさまざまな審査項目がある

ここで紹介するのは、ASIAGAPの基準書の一部です。GAP認証を取得するには、その農場のあらゆる部分がチェックされることがおわかりいただけるかと思います。認証は2年更新で、中間で維持審査を行います。

これだけ多岐にわたる管理項目をクリアするのは、農場にとっては決して簡単なことではありません。しかしだからこそ、GAP認証を取得した農場で作られた農産物に対する「信頼」という重要な付加価値が生まれるのです。次の連載では、GAP認証を取得したことで、農場はどんなメリットがあるかについて、詳しく掘り下げていきます。

荻野宏荻野 宏(おぎの・ひろし)/一般財団法人 日本GAP協会専務理事。東京農工大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。農業経済の専門家として、食糧庁企画課、畜産局牛乳乳製品課、総合食料局流通課卸売市場室などを歴任。農林漁業金融公庫への出向を経て退職。2014年に日本GAP協会に入り、翌年から事務局長、2021年4月から専務理事に就任。

【今さら聞けないGAP認証】これまでの連載
第1回 東京五輪で注目!農業成功のパートナー

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