インタビュー

【農家のあとつぎ 税金いくらかかる?】相続税・贈与税を軽くする方法

相続税・贈与税

先代から後継者へ事業を引き継ぐための計画はできあがっても、悩ましいのは相続税や贈与税などといった税金の問題。2018年に大きく改正された「経営承継円滑化法」は、農家をはじめとする中小企業が、事業承継をスムーズに進められるよう、遺産の分割方法や、税制・金融面などを支援する法律です。これまで多くの農家の悩みを解決してきた日本プロ農業総合支援機構(J-PAO)の専門家が教えます!

ポイント
・相続税・贈与税は納税猶予できる
・税額の計算方法を知る
・優遇制度を受けるには?

受け継ぐ財産が多くなればなるほど
贈与税・相続税も大きくなる

株式や事業用資産を後継者に引き継ぐ場合、その価値(時価)をお金に換算し、その価格で売買することが基本となります。

基本どおりの場合は、買う側は購入資金をどうするかが課題になりますが、それ以外の税金面を考える必要はありません(売る側には所得税がかかります)。

一方、後継者へ、売買ではなく無償で渡す場合があります。相続の場合はこれに当たりますし、親子以外の他人に無償もしくは著しく安い価格で売買することもあると思います。

これらの場合は、相続税や贈与税が発生することになります。

税金を支払うのは、資産を受け取った側となります。また、税額がいくらになるのかについてですが、おおざっぱに説明すると、

税額=(相続・贈与によりもらった財産の価額―基礎控除額)×税率にて計算します。

贈与税の基礎控除額は110万円、相続税の基礎控除額は、3000万円+相続人の数×600万円と贈与税より大きいです。

税率はいずれも基礎控除後の価格(=課税対象額)に応じて10%~55%と課税対象額が大きくなるにつれて税率は高くなります。
つまり、財産の価額が多くなればなるほど税額が多くなります。そのためにさまざまな税金対策をする必要が出てくるのです。

事業承継税制の活用も
選択肢のひとつ

農家を含めた中小企業の承継に伴って生じる遺産分割・金融・税制などの課題について対応策を定めた法律が冒頭でご紹介した「経営承継円滑化法」です。2011年に制定、2018年に大きな改正がありました。

この法律は、中小企業の事業承継にあたって、雇用を確保したり、地域経済を維持するために、後継者が先代経営者から株式などを相続したり贈与を受けたりした場合、法人と個人事業者それぞれに対して贈与税と相続税の納税が猶予されるという優遇措置が定められています。

さらに、後継者が死亡したり、他の人に事業を引き継いだ場合には、納税が免除されます。

優遇措置には、次のようなさまざまな条件があり、特例措置と一般措置のふたつがあります。
特例措置は、事前に5年以内の特例承継計画を策定したうえで、都道県知事の確認を受けることが必要です。一般措置では不要です。

特例措置と一般措置

特例措置と一般措置の違い

農業法人が納税猶予を受けるためには?

農業法人を含める中小企業が納税の猶予を受けるためには、会社の規模や、先代経営者と後継者の要件があります。

このうち会社に関する要件は、
•非上場の中小企業(農業法人の場合、資本金3億円以下または従業員300人以下。農事組合法人は対象外)
•資産管理会社(資産に占める賃貸用不動産や有価証券の割合が70%以上、またはこれらからの運用収入が全収入に占める割合が75%以上の会社)に該当しないこと……が条件です。

納税猶予を受けるためには、事前に「特例承継計画」を策定したうえで、「都道府県知事の確認」を受けることが必要です(一般措置については不要)。

個人事業主が
納税猶予を受けるためには?

法人ではない個人事業主の事業承継についても、法改正によって納税を猶予する制度ができました。2029年までの期間限定ですが、農機具などの事業用資産に伴う贈与税と相続税の100%が納税猶予となります。

納税猶予の対象となるのは、①事業用の農地等以外の土地等(面積400㎡まで)、②建物(面積800㎡まで)、③トラクター・乳牛などといった減価償却資産を相続した場合の贈与税または相続税です。

事業継続後、後継者が死亡したなど環境に変化があった場合には、贈与税・相続税が免除されます。個人版事業承継税制を受けるための主な要件は、
•複式簿記による青色申告をしている
•経営承継円滑化法にもとづいて都道府県知事の認定を受けている
•事業を継続すること……などがあげられます。

農地にも相続税・贈与税の
納税猶予制度がある!

農地にも相続税・贈与税の納税猶予制度があります。

農地が相続財産になると、複数の相続人の間で分割の対象となり、農地が細分化され、農業経営に支障をきたすことになります。

そのために相続または贈与された農地で、引き続き農業を行う場合は、一定の要件を満たせば、相続税の納税が猶予されることになりました。さらに相続人が死亡した場合などは、納税猶予が免除されます。

先代の経営者が生きている間に、次の後継者に一括で贈与した場合も、後継者に課税される贈与税が猶予されます。この贈与者または受贈者のどちらかが死亡したときには、贈与税が免除されて、相続税に移行し、引き続き相続税納税猶予制度の適用を受けられるようになります。

もちろん、いずれの場合でも納税猶予の適用を受けている農地で農業をしなくなった場合、つまり譲渡、貸付(一部例外あり)、転用、耕作放棄した場合には、猶予税額に利子税を加えて納付する必要があります。

農地に関する納税猶予については、農業委員会や都道府県農業会議、その他の事業承継に伴う納税猶予や、免除制度については、最寄りの税理士や、独立行政法人中小企業基盤整備機構、事業引継ぎ支援センターなどのサポート機関や、お住まいの都道府県の中小企業課などに相談してください。

高田裕司(たかだ・ゆうじ)/特定非営利活動法人「日本プロ農業総合支援機構」上席コンサルタント◎全国農協観光協会で農協(JA)の旅行事業の開業支援などに携わったのち、2006年から労働者のカウンセリングやコーチング、経営コンサルタント業務を開始し、これまでに800人以上の相談を受ける。2008年から現職で、農家を対象にした事業承継や働き方改革、人材育成などの支援や計画プランの策定、農畜産物販売の支援事業などを担当する。

【農家の後継者不足】これまでの連載
第1回 農業経営のプロに聞いた!3つのハードルとは?
第2回 事業承継カウントダウン、生前退位に学べ!
第3回 事業承継の計画づくり 誰がやる?
第4回 事業承継はリレーのバトンパス
第5回 子供に「継いでくれ」と言えない バトンを誰に渡す?
第6回 あとつぎ探しは恋活・婚活と同じ
第7回 婚活の次は何する?相談できる関係をつくろう!
第8回 農業がこの先 100 年続くために何をする?

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