インタビュー

【農家の後継者不足】あとつぎ探しは恋活・婚活と同じ

今、多くの農家が「あとつぎがいない。先祖代々受け継いできた農地をどうしよう」という悩みを抱えています。元JA職員で、自身も水稲種子農家のあととりとして、農業界初の事業承継士になった伊東悠太郎さんは、「後継者探しは婚活に学ぶところが多い」と話しています。

ポイント
・情報はなるべく詳しく!
・出会いは作るもの
・支援者の心がまえとは?

自己開示しないと始まらない

あとつぎが見つからない農家が、どうやって探したらいいのか?をテーマにした今回は、後継者探しをわかりやすく恋愛にたとえて説明していきたいと思います。

第一歩は、自分が置かれている現状を包み隠さず知らせることからです。「恋人がいません。現在募集中です」から始めるように、「ウチの農家は後継者がいません、募集中です」と自己紹介してくれないと、周囲はどう動いて良いかわからなくなります。

婚活では、「募集中」だけではなく、職業、年収、趣味、財産などの情報が多ければ多いほど、周囲からの関心度が高まります。後継者探しでも「水稲農家、耕作地の面積50ヘクタール、トマトの生産はハウス10棟で年間売り上げ●億円、トラクター95馬力2機所有」などの情報も、開示する必要があります。

とはいえ、自己開示は勇気がいることです。なかなか簡単にできません。最初から全てをさらけ出さずに、ある程度お互いを知ってからでも良いかもしれませんが、いずれにせよどこかの段階で、しっかりと開示する必要があります。

「運命的な出会い」そんなものはない

「たまたま訪れたバーで、隣に座った人と意気投合して恋人に………」こんなドラマのような出会いに期待したいけれど、そんなことはまずあり得ません。

バーで出会う

「マスター、あちらのお客さんにカクテルを…」そんなドラマみたいな出会いはありえない

農家におきかえてみると、「ホームセンターの農薬売場で、後継者候補が見つかった」というところでしょうが(笑)、こんな偶然の出会いに期待するよりは、自分から新規就農者や移住希望者が集まるようなイベントにどんどん出かけて行ったり、自分から声をかけていかないと相手は見つかりません。

新規就農者の情報が集まってくるJAや県・市町村などにも、「後継者募集中」であることをしっかりと伝え、希望者がいればすぐに教えて貰えるようにしておくことも重要です。

その際は、具体的にどういった条件を希望するのかについてもはっきりしておくと、担当者もマッチングしやすくなると思います。とにかく、「私は出会いを求めています!」と強くアピールするくらいでないと、なかなか後継者候補は見つかりません。

恋愛期間が大事

もしめでたく後継者候補が見つかったとしても、すぐに結婚しましょうとはなりません。恋愛期間中に、相手の良いところや考えを知り、自分の良いところや考えも伝えあいましょう。

逆に嫌な部分や最初に言っておきたいことは、この時点ではっきりと伝えておくべきです。恋愛期間の最初は燃え上がりやすいですが、冷静に結婚相手として妥当なのか見極める必要があります。

もう一つ、「結婚を前提としたお付き合い」と「結婚を前提としないお付き合い」は真剣度が違うということです。事業承継の場合は、前者であるということを理解したうえで、お付き合いを始める必要があります。お互い真剣に考えているという共通認識を持ち、恋愛期間を過ごすことで、結論が違ってくるのです。

プロポーズは覚悟を決めて!

もし、その相手が「後継者にふさわしい」「この経営者とならやっていけそうだ」となれば、シチュエーションをしっかりと考えて、「継いで欲しい、継がせて欲しい」とプロポーズをしましょう。

一般的に男性が女性にプロポーズするパターンが多いと思いますが、最近では女性から男性へというカップルもいるでしょう。事業承継の場合も、経営者から後継者へプロポーズもあれば、その反対もあると思います。プロポーズの方法も人それぞれですが、私個人としてはストレートな表現が良いと思っています。いずれにしても一世一代の大仕事ですから、いろいろと考えてみるのも楽しいかもしれません。

プロポーズ

結婚でも農業の事業継承でもプロポーズはいろいろなやり方がある

婚活サイト・婚活イベントも支援のうち

次に、事業承継する農家の相談窓口である支援者やサポート機関に向けて書いておきたいと思います。

これも婚活にたとえて説明しますが、ひと昔前は行政などの公的機関が婚活支援をやることに対して、「いかがなものか」という論調が少なくありませんでした。でも最近では、ほとんどの自治体で何らかの形で婚活支援に取り組んでいて、その成果も着実に出てきています。だとすると、やはり婚活イベントのようなものはたくさんやって、出会いの機会をどんどん増やしていくことが必要だと思います。

さらに、婚活サイトが充実すれば、最適な相手が見つかる「マッチング率」も向上するのではないかと思います。農業の事業承継に当てはめると、地域や生産品目、経営規模、売上規模、所有施設・機械などが検索できて、希望する農家とマッチングできるような仕組みを確立させることが急務だと思います。

事業承継の支援というと、経営者と後継者の間に入って支援をすることをイメージしがちですが、後継者を見つけることも支援の一環だと思います。事業承継の問題は出会いがないことが大きいと思います。とにかくまずは出会うきっかけをどんどん創出していくことも重要な支援なのです。

伊東悠太郎

提供:井関農機

伊東悠太郎(いとう・ゆうたろう)/水稲種子農家、農業界の役に立ちたい代表◎JA全農で事業承継支援を立ち上げて、事業承継ブックを発行。農業界初の事業承継士を取得し、全国で講演や研修を行う。現在は退職し、実家を継ぎ、本業の農業を続けながら、事業承継の啓発、研修、講演、執筆等を行っている。※事業承継ブックはJA全農のホームページでも内容を公開。現物は最寄りのJAへお問い合わせ下さい。
https://www.zennoh.or.jp/tac/business.html

【農家の後継者不足】これまでの連載
第1回 農業経営のプロに聞いた!3つのハードルとは?
第2回 事業承継カウントダウン、生前退位に学べ!
第3回 事業承継の計画づくり 誰がやる?
第4回 事業承継はリレーのバトンパス
第5回 子供に「継いでくれ」と言えない バトンを誰に渡す?

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