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どうする?農家のあとつぎ問題「事業承継を成功させる計画づくり」誰がやる?

どうする?農家のあとつぎ問題「事業承継を成功させる計画づくり」誰がやる?

先祖代々、大事な土地を守ってきた農家にとって、あとつぎの問題はいつだって悩ましいもの。先代が築いた人脈や信用、さまざまな有形無形の資産をスムーズに引き継ぐためには、事前の計画づくりがカギを握ります。自身も水稲農家の後継者で、農業界初の事業承継士、伊東悠太郎さんは、「計画をつくるのはあくまでも後継者自身だ」とうったえます!


ポイント
・後継者は受け身になるな!
・口に出すことで考えがクリアに
・考えの違いを「見える化」で共有


計画づくりの主体は後継者


いざ、事業承継の計画づくりにあたって、最初に認識することは、主体はあくまでも「後継者自身」という点です。

計画を作ろうとすると、どうしても、知識や経験が豊富な今の経営者や、経験豊富な支援者が口出ししたくなったり、時に手を出したくなる場面が多くなりますが、それは将来的に見るとプラスにはなりません。

その結果、計画が完成しても、後継者は受け身で実践することになるからです。それならば自分で考えた計画を納得して実践する方がずっと良い。

もうひとつは、この計画づくり自体が、経営者になるための取り組みの一環だからです。計画づくりに主体的に取り組むところから事業承継は始まっていますし、実際につくっていくうえでは、経営者や周囲の支援者に積極的に質問していく場面も多くなりますが、そのこと自体が後継者として成長するうえで大きな意義があるのです。


積極的に対話して


計画の作成過程では、数え切れないくらいの疑問に直面します。

たとえば「この事業がいかにあるべきか?」「事業承継のために何をすべきか?」「そもそも何をわかっていて、何をわかっていないのか」「いかに後継者に託すべきか?」「いかに経営者は退くべきか?」……など思いつくだけでもたくさんです。

しかし、事業承継について明確な考えを持っている人はそう多くありません。ですから計画づくりの過程で、自分自身とはもちろん、経営者や支援者らと積極的に対話して自分の考えを深めていくことが大事です。

事業承継の計画は、対話を通じて、考えをまとめながらつくろう

ときには、他業種の経営者や後継者と話すことも有意義です。自分の考えを述べながら、質問をしたり、されたりすることで、いろいろな発見がありますし、話を重ねていくうちに、問題点も明らかになるし、考えがまとまって改善されていきます。



そのためにも、「対話」の機会は意識的に増やしていく努力が必要です。また、考えは時間が過ぎると変化することもありますから、積極的に対話を続けていきましょう。そのことで見えてくるものがきっとあるはずです。


経営者と後継者~考えの違いを明らかに


経営者と話をすると「後継者はちゃんとわかっているはずだよ」と言われることが多いのですが、後継者に確認すると「そのことは一度聞いたけれど、実はよくわかってない」ということが良くあります。

事業承継は、経営資源である人・モノ・金・情報のすべてをバトン・パスする必要がありますが、1回聞いたくらいで理解できるものではありません!

また、年に1回しか経験しないような出来事も少なくないため、理解できるまで時間がかかるのは当然です。

筆者が考案したチェックシートを使って両者のギャップを明確にしよう!



何十年もの経験を積んだ経営者と、引き継いだばかりの後継者では、経験値も違えば、理解度も確実に異なるわけですから、ギャップは避けられません。そこで、チェックシートなどを使って、考えの違いについて、双方が同じように認識できるよう「見える化」することが大切です。

また、経営者と後継者の間で、経営方針や農業に対する考え方が違う場合も珍しくありません。

これも、何もない状態で互いにぶつけ合っても、噛み合うことは少ないので、文章にして「見える化」すると、冷静な議論ができるはずです。

事業承継には、経営者と後継者のどちらかの頭のなかにしかないものや、文字起こしされていない言葉など、見える化できていないものが山のように出てきます。

ですから、紙やホワイトボードなどに、意識して文章や図を落とし込んで問題点を「見える化」することで、初めて両者の考え方の相違がはっきりと見えてきます。そのギャップを埋めるためには、何をできるか? するべきか?を次のやることリストに残していくことで、課題を具体的にしていきましょう!


やることリスト


経営資源である人・モノ・金・情報などをバトン・パスするために、「じゃあ具体的に何をするか?」を考えましょう。

前述のとおり、親と子の両世代間でギャップが発生していることを課題にするのもオススメです。

もしくは、「勉強会へ参加する」「ドローンの免許を取る」「就業規則を作る」「経営理念を作る」なども良いかもしれません。

この『やることリスト』にも正解はありません。後継者が必要だと思ったものをひたすら書き出してみましょう。質よりも数で勝負です。

また、経営者の方が「自分が先代から事業承継したときに困ったこと」は、次の世代でも同じことが起こる可能性が高いので、それもリストアップしておきます。

この部分は、後継者の仲間同士で考えてみるのも良いと思います。ひとりで考え続けるのはしんどいので、ワイワイガヤガヤ議論しながらやる方が楽しくできるはず。

いずれにしても『やることリスト』をどれだけ具体的に、たくさん書けるかによって、次にご紹介する「事業承継の計画づくり」の完成度が決まります。やることリストは計画づくりの山場かもしれません。


あとは落とし込むだけ


『やることリスト』をたくさん書けたら、あとは事業承継計画に落とし込むだけ。そう難しく考えることはありませんが、これまでの経験で1年目や2年目の農閑期にやることリストが集中する傾向があるので気をつけなければなりません。

そこで、特定の時期に負担が集中しないよう、本当にそのタイミングでやる必要があるのかをよく考えて、やることをうまく分散させることが重要です。

事業承継の計画づくりは、一般に510年かけて取り組むことが望ましいと言われています。

これに対して、親の病気などで、急きょ事業承継に取り組まねばならない場合は、せっぱつまっていますから、一度にあれもこれもと詰めこまざるを得ません。そんなリスクを避けるためにも、余裕をもって計画をつくれるよう早め早めに取り組むことが大事です。

『事業承継ブック』より計画表の“やることリスト”


この落とし込む作業も、最初から完璧を目指す必要はありません。実際に事業承継計画にもとづいてやることリストに取り組んでいくなかで、当初の予定から変わっていくものです。重要なのは、その変化に柔軟に対応できるかどうかです。

提供:井関農機

伊東悠太郎(いとう・ゆうたろう)/水稲種子農家、農業界の役に立ちたい代表◎JA全農で事業承継支援を立ち上げて、事業承継ブックを発行。農業界初の事業承継士を取得し、全国で講演や研修を行う。現在は退職し、実家の水稲種子農家を継ぎ、本業の農業を続けながら、事業承継の啓発、研修、講演、執筆等を行っている。※事業承継ブックはJA全農のホームページでも内容を公開。現物は最寄りのJAへお問い合わせください。


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