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Editor’s Eyes 選び方しだいで収益倍増 東直斗の「運ぶだけじゃない!稼げる動力運搬車」

Editor’s Eyes 選び方しだいで収益倍増 東直斗の「運ぶだけじゃない!稼げる動力運搬車」

収穫コンテナはもちろん、肥料袋などの資材を運んだり、何かと便利な運搬車は、農家なら1台は必需品です。

作業者が乗用するタイプのほか、動力源もエンジン式やバッテリー式などさまざまです。

農機具を賢く選ぶことで、経営改善を目指すこの連載、2回目は動力運搬車の選び方を教えます。

この記事のポイント
・農家は「どんぶり勘定」が多い
・動力運搬車の種類とは?
・エンジン式とバッテリー式のメリット・デメリット
・動力運搬車の購入を検討する人は?
・どうやって選ぶか?
・1回あたりの運搬時間×荷物を運ぶ回数
・効率を良くすることが、利益につながるとは限らない
・優れた農機具屋は、必要のない機能を勧めない

農家は「どんぶり勘定」が多い


前回から始まったこの連載を担当している(株)クリアーの東直斗です。

和歌山県みなべ町を拠点にする藤原農機で働いた10年の間に、日本初となる農機具の宅配レンタル事業を立ち上げ、現在は子会社を設立して、経営者向けの研修や支援を行っています。

紀州南高梅の産地として知られるみなべ町では、梅の花が咲く2月は観梅シーズンで盛り上がります。3月からは防除の時期を迎えますが、2024年は梅の開花が例年より早かったこともあって、梅農家さんたちは1月の終わりからソワソワしていました。この季節になると、「今年も農業シーズンが到来したな」と感じます。

みなべ町の梅の花
みなべ町の梅の花
クリアーを設立して以来、農業法人の経営サポートに協力する機会が増えてきたのですが、農家さんの経営を見ていて思うのは、圧倒的に「どんぶり勘定」が多いということです。

皆さん、数字が苦手というわけではないのですが、いざ経営や会計の数字になると、苦手意識のある人がほとんど。

この連載では、農業と経営の両方を知るプロとして、農機具選びに関する疑問を取り上げていますが、まずは入門編として、農家が苦手とする数字を使った経営として、どんな農機具を選ぶと得なのか、損なのか?という観点からお伝えしていきます。

今回のテーマは「動力運搬車」です──。

最近は、バッテリー式も普及していますが、キャタピラで動くエンジン式タイプから乗用タイプの動力三輪まで、農家なら一家に一台、何かしらの運搬用品を所有しています。

新しい機材の購入を検討している経営者はもちろんですが、これまで本体価格と機動力だけで運搬車を選んでいた皆さんにとっては、目からウロコとなる情報をお伝えします!農機具選びひとつで収益性が変わります。

動力運搬車の種類とは?


動力運搬車と聞いて、皆さんはどんな機械を思い浮かべますか?

大抵の人は、エンジンでクローラー(キャタピラ)を駆動させて、ハンドルを操作しながら歩いていく「クローラータイプ」をイメージするのではないでしょうか?

こちらは主に、収穫コンテナや肥料袋を運んだり、動力噴霧器を搭載してみたりとさまざまな用途で使われています。

クローラータイプの運搬車/藤原農機撮影
クローラータイプの運搬車/藤原農機撮影
しかし、営農地域によっては、三輪タイプであったり、そこに座席が搭載されていて、作業者が座りながら農道を移動できるタイプもあります。生産している作物によって、機械にも地域性があるのです。

また、タイヤ駆動式の場合であれば、バッテリー充電式や、従来の一輪運搬車を電動化したタイプなどもあります。一言で「動力運搬車」といっても、形や動力源の種類が多岐にわたります。

この記事では、「動力運搬車」という呼び名のとおり、「エンジンやバッテリーなどの動力源で動く農業用運搬機器」というくくりで考えていきたいと思います。
三輪式の動力運搬車/藤原農機撮影
三輪式の動力運搬車に乗る筆者/藤原農機撮影

エンジン式とバッテリー式のメリット・デメリット


どんな動力運搬車も、仕組みとしては非常にシンプルで、エンジンやバッテリーなどの動力と繋いだベルトや軸を回転させて、クローラーやタイヤを回して走行するというものになります。

エンジン式のメリットは、①燃料を補給すればいつでも使えることと、②パワー・トルクがあるので重いものでも運びやすく、一度にたくさん運べることが特徴です。

さらに、油圧リフトや油圧ダンプなどが搭載されている機種を選べば、荷物を軽トラックの高さに合わせて持ち上げることもできるので、荷台の特徴にバリエーションが多くなります。

昔ながらのネコ車の面影を残したバッテリー式運搬車/藤原農機撮影
昔ながらのネコ車の面影を残したバッテリー式運搬車/藤原農機撮影
一方、バッテリー式は、燃料コストがかからないので、エンジン式に比べると手軽に扱うことができます。最近はパワーがある機種も増えていますので、バッテリー持続時間の範囲内であれば、最大で100kgぐらいまでの重量なら、ストレスなく使えます。

足回りを見ると、エンジン式はクローラータイプが多い反面、バッテリー式はタイヤが多いイメージです。

しかし、ここでは「タイヤ式は小回りがきく」「クローラー式は傾斜地やガタガタな不整地に強い」というイメージで考えていただくとわかりやすいのではないでしょうか?

動力運搬車の購入を検討する人は?

収穫や資材の運搬など、さまざまな目的で使える動力運搬車ですが、購入者はどういった人なのでしょうか?

一般的には以下の3つのポイントにあてはまる人になります

荷物が重く、量も多いので人力では運べない
・畑から倉庫や軽トラックまでの移動距離が長い
・作業者が高齢で体力が落ちているので、重い荷物が運べなくなった
…などという場合に検討するようになる人が少なくありません。

冒頭で、動力運搬車にはさまざまなバリエーションがあると申しましたが、価格帯もさまざまです。

例えば、積載量200kgのエンジンタイプなら、安いもので20万円台から購入可能です。

動力運搬車の場合、見た目が似ているものが多いので一見すると判別しにくいのですが、積載量が600kgにもなると、機能もハイスペックになるので、本体価格が100万円前後するものもあるのです。

どうやって選ぶか?


農機具の購入を考える場合、動機は「作業がしんどい」「不便だからもっとラクしたい!」というケースがほとんどです。

動力運搬車の場合も、現場の状況や必要な作業に合わせて、さまざまな種類から、条件が最適な機種を絞り込む選び方で間違いありません。動力運搬車を購入するのは、「重い荷物を長時間運ぶ必要がある」というのが基本ですから。

では、動力運搬車選びで利益を増やすには、どんな視点が必要なのでしょうか?

1回あたりの運搬時間×荷物を運ぶ回数

作業効率を考える際には、「1回あたりの運搬時間」と「荷物を運ぶ回数」の関係が重要になります。

作業効率
作業効率の省力化はこちらの計算式で考えるといい
大型運搬車の購入を計画している人は、「荷物を運ぶ回数」を減らして、往復する作業を効率化したいと考えているわけですよね?

注意が必要なのは、「1回の運搬時間」の方は、動力運搬車を導入した場合と、人力で運ぶ場合を比べても、大きな差はないという点です。

──というのも、動力運搬車の最高時速はだいたい4~5km/h。これは人間が歩くスピードと変わりません。

そのため、作業人員がしっかり確保できる組織であれば、人力の方がトータルの作業時間が早くなる可能性もあるのです。

作業人員がいない場合は、迷わず動力運搬車を購入したいところですが、そこに数十万円の購入コストをかけるか、アルバイトを雇うかは悩みどころ。あまりにもキツイ重労働であれば、アルバイトも集まりにくくなります。

体力的な負担と、コスト面とのバランスを考えないと、「過ぎたるは及ばざるが如し」のことわざどおり、機械化を積極的に進めた結果、かえって貧乏になってしまうリスクもあるので、注意が必要です。

効率を良くすることが、利益につながるとは限らない


"機械化貧乏“が出ましたが、これは農家の間で日常的によく言われる言葉です。

同じ意味で“農機具貧乏”と言われることもあります。販売成績が良い農機具屋のセールスマンの場合、農家のお客さんから「アンタたちのせいで、農機具貧乏になるわ~」と皮肉を言われることがよくあります。

意味するところはおわかりかと思いますが、人手不足や高齢化を農機具でカバーしようとして、資金繰りで苦労することです。

藤原農機の店内
藤原農機の店内のようす/筆者提供
農機具を買う際は、次のような流れが一般的です。
①    客が購入目的を伝える
②    客が予算を伝える
③    店が条件に合った機種を選んで客に進める


お客さんが指定した条件に合わせて、最適な機械を選ぶのが私たち農機具屋の仕事ですが、農機具屋は必ずしもお客の経営状況を把握していません。

したがって、お客の収支に対して、購入価格が高すぎるなど、そもそも予算設定が間違っていると、本当に農機具貧乏に陥る可能性があるのです。

優れた農機具屋は、必要のない機能を勧めない


私が考える、信頼できる農機具屋のイメージは、「高級車ではなく、身の丈にあった車を提案してくれる人」です。言い換えると、利益計算の考え方を教えてくれる人とも言えます。

以前、高額の機械を欲しがるお客さんに、予算よりもずっと安い商品をオススメしたことがあります。

当初、不満そうな表情を浮かべていたお客さんですが、最終的にはご自分の経営規模に見合った機械を購入しました。農機具屋としては、目先の売上にこだわるより、このお客さんと長い付き合いをする方がお互いにとって得、つまりWin-Winの関係になれると考えた結果です。

それに、自分が販売した機械の支払いのせいで、その農園がつぶれてしまったら夜も寝られませんからね。

話を動力運搬車に戻すと、「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」という点では同じです。

先ほど、作業効率の計算式「1回あたりの運搬時間×荷物を運ぶ回数」をご紹介しましたが、視点を変えれば、こういう考え方もあります。

いっぺんにたくさんの荷物を積載できるパワフルなエンジン式運搬車を選んで、運搬回数を減らすよりも、安価なバッテリー式の方が、往復回数は増えるが、1回ごとに積載する作業時間が短くなるので、結果としてはトータルの作業時間が短縮できるという事例もあるのです。

農機具選びでは、まとめて作業できることを効率化と考える農家も多いのですが、なんでも盲目的にまとめてやるのが良いという訳ではないのです。

正解はひとつではない。アイディア次第で改善できる


「1回の運搬時間」を減らす点に着目すると、動力運搬車を買う以外にもいろいろな方法が思いつきますよね。

例えば、作業時間を短縮するために圃場から倉庫までの動線にある障害物を無くして最短ルートを整備するのもひとつです。

収穫物のそばまで軽トラックが入れるならば運搬車は不要だ
収穫物のそばまで軽トラックが入れるならば運搬車は不要だ
ほかにも、荷物の位置まで軽トラックで横付けできるようにすれば、そもそも運搬車を導入する必要がなくなります。

つまり、お金をかけなくても、環境の整備を進めることによって、作業効率を改善することが可能になります。アイディアの勝利です。

利益の最大化のためには、投資ばかりを考えるのではなく、「その動力運搬車って本当に必要ですか?」と問い直すところから始めてみてはいかがでしょう?

「1回の運搬時間×荷物を運ぶ回数」を念頭に、そこにかけるコストは最小限にしながら、労力を減らして、利益を最大化できる機種を選ぶという考え方が重要なのです。

次回もお楽しみに!

この記事の執筆

東 直斗

ITエンジニアとして5年のキャリアを積んだ後、和歌山県の農機具専門会社「藤原農機」で10年にわたって、農機具の修理・販売から、国内最大級の農機具ECサイト「アグリズ」を運営し、農機具の宅配レンタルサービスを立ち上げる。2023年10月、藤原農機の100%子会社「クリアー」を設立し、農業をはじめとする小規模事業者の支援を開始

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