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Editor's Eyes 注目の「推し農家」10人が集結!新規就農予備軍と一緒に農業の未来を語りつくすイベント 東京・銀座で開催(後編)

Editor's Eyes 注目の「推し農家」10人が集結!新規就農予備軍と一緒に農業の未来を語りつくすイベント 東京・銀座で開催(後編)

「就農と経営」をテーマに活発な議論が交わされた第1部が終わると、今度はパネリストを替えて第2部がスタート。

農業経営には欠かせない地域社会との関わり方や、農業の未来について5人の農業経営者が話し合った。後編をリポート。(撮影:中山ノリ、取材:田川公子)

地域とつながってこその農家


第2部のテーマは「地域と未来」。農業を生業(なりわい)とするには、地域とどのように向き合ったらいいのか、そして、推し農家の目には、農の未来がどのように見えているのだろうか?というところから議論が始まった。

〜変な農家だけど、田んぼは地つづきだ〜

竹本彰吾さん
竹本彰吾さん

「たけもと農場」のロゴ入り、ブルーのTシャツがトレードマークの竹本彰吾さんは、石川県で江戸時代から続く米農家だ。

両親から農家を継げと言われたことはなかったが、高校三年生のときに、父から仏間に呼ばれた。

「おれは田んぼに行って米をつくっとるが、それが仕事じゃない。うちには地主さんや集落の人たち、いろんな人たちが関わっていて、その人たちの期待に応えるのが仕事なんや」と言われたという。仕事を考えるとき、給料や休日などの条件も大事だが、まわりの人の期待にどれだけ応えられるか、ということなんだと理解し、その場で就農を決めたという。

就農して20年になるが、現在は自社で生産したイタリア米をきのこや調味料と合わせたリゾットセット「リゾットMAMMA」を開発。

「変な米農家です」と笑う。ただ、田んぼは地続きなので、変わったことをやっていると近所からの目にさらされる。「ちゃんと説明すれば、わかってもらえる。でも、米農家には、地域との関わりしかありません」。

〜「昔は畑、今は住宅地」の悩み〜

千葉県我孫子市で、150種類の有機野菜をつくっているのは、ベジLIFE!!の香取岳彦さんだ。
香取岳彦さん
香取岳彦さん
東京駅から電車で1時間、という地の利を生かして、野菜をつくって販売することと並行して、農業体験事業を展開する。「保育園や中学生に畑仕事を体験してもらっています。最近は、セカンドキャリアとして農業を考える社会人の人たち向けの講座を開設しました」。

香取さんの農園は、近年はすっかり住宅地に囲まれてしまった。「畑仕事のトラクターが通ると、どうしても泥が落ちてしまうので、道が汚れたら掃除をし、風のある日は堆肥を撒かないようにしています。こちらが汚れや匂いを気にしていると、近所の方も理解してくれるようです」。

〜移住して、法人就農〜

アグリイノベーション大学校大阪校の一期生の橋本純子さんは、香川の農業法人アンファームで、法人就農するために、大阪から移住した。

橋本純子さん
橋本純子さん
かつては農業資材の会社に勤めていたが、農業の知識を深めたくて入学。勉強しているうち、どうしても農業がしたくなって、大学の講師を頼って、香川にやってきた。

社長の安藤数義さんと出会ったことから、アンファームに入社。今は、国産アボカドの生産に力を入れる。
「法人就農のいいところは、就業時間が決まっていて、アフター5があるところです。その時間に、NPO法人に入って町づくりの仕事に参加したり、移住者のサポートをする仕事をしています」。

移住してきた橋本さんを歓迎してくれた地域で、今度は移住者の視点が必要な活動に加わっている。

〜サラリーマンと農業の二足の草鞋で〜

八谷耕平さんは、有機の農薬メーカーに勤めながら、妻の実家が営む沖縄のマンゴー農園の経営に関わるようになった。農業はまったくのしろうと。


八谷耕平さん
八谷耕平さん
自分たちだけではできないハウスのビニール張りを地域の人たちに手伝ってもらっては、仕事終わりにバーベキューでもてなしたり、定期的に行われる芝刈り行事に参加したり…。

今では地元の人たちの困りごとをまとめて議会に陳情するなど、地元のための活動にも力を入れている。「2025年には沖縄北部にテーマパークができるので、福祉事業と連携したマンゴーの観光農園を考えているところです」と抱負を語る。

〜Uターンで法人農業経営〜

熊本県八代市で、稲わらを発酵させて牛用の飼料(ホールクロップサイレージ=WCS)をつくるフィールドマスター合同会社を経営しているのは、林孝憲さんだ。
林 孝憲さん
林 孝憲さん
かつて父は畳表の原材料であるい草を生産していたが、生活の洋風化で断念。大学卒業後、肥料メーカーに勤めていた林さんは会社をやめ、Uターン就農を決意した。

刈り取った稲わらを、ロールにして密封し、発酵させて飼料とする。「150ヘクタールを管理、100軒の農家と契約していますが、そのためにも信頼していただかないといけない。Uターンと言っても時間がたっていて、昔知っていた小学生が、もう立派な大人になっているくらいですから。消防団や4Hクラブ(農業青年クラブ)に入ったり、農業法人の横のつながりに参加したりしています」と、ここでも地域活動への参加の意義を訴える。

「でも、九州ですから、やっぱり飲みニケーションかな(笑)」。

ブランディングして、小さな農業を。担い手不足の地域は大規模農業


さて、未来の就農予備軍にとって、いちばん気になる「農業の未来」について、推し農家はどう見ているのだろう?

「農業は二極化すると思います」と言うのは、ベジLIFE!!の香取さんだ。

「得意不得意を補い合うような仲間と一緒にやるチーム農業と、都市近郊で見られるような独立農業に分かれると思います。ぼくは都市近郊で土地も限られているので、個人で農業をやっていますが、情報を発信しながら、いかにブランディングするかが大事になってきます」

完全無農薬の野菜づくりに取り組む香取さんの畑では、採れたての野菜を直売しているが、支払いはなんと「PayPay」。「ぼくがいつもそこにいるわけでないので、現金を介さないようにしています」。都市型ならではの工夫を凝らしている。

一方、WCS生産は稲わらを丸ごと牛用の飼料にするため、土の中に有益な有機物が残らなくなるのが課題だと指摘する林さん。

そこで、熊本県北部の畜産農家に発酵飼料を届けるトラックの帰りには、農家で排出された牛の堆肥を持ち帰って、今度は地元に提供するという資源循環型の農業を実行している。

林さんも、農業の未来に二極化を見ている。─小さくてもオリジナリティで勝負する農業と、広い土地を利用して効率よく農業をする大規模農業のふたつだ。林さんは後者だが、これから農業従事者の高齢化で、自分たちの耕作できない土地を託されることで大規模になっていく場合もあるだろうという。法人化を選ぶことで、従業員の福利厚生や人材育成の環境を整えていくことも必要になるだろう。

気候変動に順応して学び続ける。農業経営は柔軟さが大切


また「地球沸騰」ともいわれる温暖化は、日々作物と向き合う生産者にとっては、年々、強く実感する問題だ。

香川に移住した橋本さんは、「ここにきて9年、気候は明らかに変わっています。香川でも雨が降るようになりました。こういう環境の変化に対応していかないといけないんです。そのためには、学びをとめないことです。これからの農家は学ぶことを厭うようではつとまりません」。

沖縄の八谷さんも、「僕がマンゴーをつくるようになって3年になりますが、その間、大きな台風が2回きました。沖縄では飛行機が2週間飛ばないと、マンゴーは売り先を失って、価格が暴落してしまうんです。そこで、売れなくなったマンゴーを、ピューレにすることを思いつきました。青果だけでやっていこうとすると、厳しい環境ではあります」と6次産業化に踏み出した背景を語る。

「農業の未来はほんとにわかりません!!」ときっぱり言うのは、竹本さんだ。

「就農して18年になりますが、最初からずーっと、次はおまえらの時代だ、と言われてきました。いったいいつになったら、僕らの時代がくるんだろう(笑)。異常気象はもう日常になってしまいました。でも、大失敗をする世界ではありません。コンビニで働きながら、どうしても作りたい栗の栽培に挑戦して成功した人もいます。逃げ道はいくらでもあるんです。頭を柔軟にして順応していきましょう」

最後に、推し農家の皆さんから未来の就農予備軍にアドバイスがあった。

「よおく考えよう〜。お金は大事だよ〜🎵」突然歌い出したのは、ベジLIFE!!の香取さんだ。

「野菜は、初期投資して種を蒔いて収穫するまで、半年から1年かかります。回収の遅い事業です。だからそのつもりで、無駄使いをしないで備えてください。僕は就農するために、貯金しました」。

思いつくことはなんでもやってみよう


「最初はお金のこともよくわからなかったし、販売先もわからなかった」と告白するのは、八谷さんだ。わからないなりに、フルーツパーラーに片端からダイレクトメールを送った。「思いつくことはなんでもやってみて、今があるのかな」という。「農業の魅力はいろいろあるけれど、定年がないことも魅力のうちですね」。会社員でもある八谷さんの実感だ。

「素敵な親方を見つけてください。農業にはいろんな仕事があります。水道の配管からビニール張りから、もちろん栽培技術も。こんなにいろんなことができる人なんて、めちゃかっこいい。みなさんも、かっこいい農家さん目指して、がんばってください!」と若い後輩にエールを送る橋本さん。

「おすすめは、Tシャツをつくること。地域の人たちに覚えてもらえる入り口です!」と話す竹本さんに、会場は笑いに包まれる。

ベジLIFE!!の香取さんもオリジナルTシャツを着ているし、フィールドマスターの林さんも、「実は……」といって、持参していたTシャツを取り出した。背中に飼料のロールのデザインが入っている。くすっと笑えるTシャツは親しみが湧くし、思った以上に地域の人たちからも覚えてもらえる名刺代わりのアイテムだ。

Tシャツを披露する林さん
Tシャツを披露する林さん

出会いとコミュニケーションを大切に


「いろいろな人たちとの出会いを大切にしてほしい」というのは林さんだ。離れていても、SNSというツールもある。林さんは稲わらを、トラクターで手品のようにロールにしてトラックに積み上げる動画を配信している。発信することが、出会いをつくることにもなるし、だれかの背中を押すことにもなる。

農業は、人間よりもはるかにスケールの大きい、大地と気候と時間を相手にする仕事だ。どんな小さなことからも学びとれるように、アンテナを磨いていてほしい。推し農家さんたちから、未来の農家予備軍たちへ、熱い応援の言葉が降り注いだ。

トークセッションが終わると、会場の外では10人の推し農家たちが、自社生産品のパンフレットや生産品を並べて、各ブースで説明してくれる。

薄羽養鶏場のブースには、思わず手に取りたくなるようなイラストのついた卵のパッケージが。「イラストレーターさんが登録しているサイトから、商品イメージに合うイラストレーターさんを探してお願いしたんです」と薄羽さん。こだわりの飼料の種類が、かわいいイラストになっている。

薄羽養鶏場の卵パック
薄羽養鶏場の卵パック
八谷さんの「TROPICAL FIELD モリ之ナカ」のブースでは、廃棄必至のマンゴーを、苦肉の策でピューレにしたという、おいしいマンゴーピューレが試飲できた。

「うちもいちご農家なんです」という卒業生が、いちご農園を開園した三ツ間さんに声をかける場面も。先輩も後輩も、これから一緒に農業を担う仲間として、学び合う場を広げてほしい。

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