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【世界の注目農業ニュース 】中国「アフリカとの農業貿易を強化」/ロシア「米国・欧州産農産物の輸入禁止令を続行」

「America is back(外交する)アメリカが戻って来た」。米国のジョー・バイデン大統領は、2021年2月4日にアメリカ合衆国国務省で行なわれた外交方針についての初の演説で、「強い外交」を強調し、「我々は外交で再び世界を主導する用意ができている」と述べ、同盟国との関係を修復し、敵対する攻撃的な国へは強硬な姿勢を宣言し、新しい時代の幕開けを約束した。世界の農業は、アメリカ合衆国に誕生したバイデン政権によってどう影響を受けるのだろうか? 米国ロサンゼルス在住のライター、藤本庸子が解説する世界の農業ニュース。

ポイント
・中国は1991年以来、年明け最初に外務大臣が公式訪問する行き先をアフリカと決めている。農業貿易の面でアフリカ諸国は中国の重要なパートナーとみなしているからだ。
・米国、欧州からの農産品輸入制限をしているロシア。穀物の生産量は2020年に10%増加し、家畜生産も着実な成長を継続。特に民間の農業事業者による生産量は、国内の総農作物生産量の20%を占める割合にまで成長している。
・中東イエメンでは5年続く内戦により、500万人が2021年内に飢饉に陥る寸前となると言われる。

中国「アフリカとの農業貿易を強化」

米国のジョー・バイデン大統領は、2021年2月4日にアメリカ合衆国国務省で行なわれた外交方針についての初の演説で、中国を「最も重大な競争相手」と呼び、「我々は中国の経済的な不公正に立ち向かい、攻撃的で威圧的な行動に対抗し、人権や知的財産やグローバル・ガバナンスに対する中国の攻撃を退ける。しかし、米国の国益となる場合は中国政府と協力する」と述べた。

バイデン大統領の外交方針の演説について、中国外務省の汪文斌報道官は「両国には意見の違いが存在するが、共通の利益の方がはるかに大きい」とコメントをしている。

ドナルド・トランプ前大統領は米中対立を激化させたが、バイデン大統領は中国をけん制してはいるものの、経済的な分野では対等に競争相手として位置づけている。この判断は賢明だろう。中国は発展途上国を相手に、事業を着実に進めており、GDP(国内総生産)では世界1位の米国の次、世界2位なのだから。

中国の英字紙Global Times(環球時報)の2021年1月5日付けの記事China-Africa agriculture, infrastructure cooperation to be strengthened: expertsによると、「中国-アフリカ間の農業とインフラストラクチャー協力を強化」という見出しで、「中国とアフリカ諸国は、特に農業とインフラ分野において、新しい自由貿易協定の下で二国間貿易を強化するための、新しい協力の機会を歓迎している」とある。

中国は1991年以来、年明け最初に外務大臣が公式訪問する行き先をアフリカと決めている。なぜなら、農業貿易の面でアフリカ諸国は中国の重要なパートナーであり、中国はアフリカの一次農産物に付加価値を与え、アフリカの産業を拡大することに取り組んでいるからだ。

中国とアフリカ諸国の二国間貿易には依然としていくらかの不均衡はあるが、中国はアフリカからより多くの農産物の輸入を奨励するために、さまざまな政策を導入している。

2021年の年明け初日には、中国とモーリシャス共和国との間に「自由貿易協定(FTA)」が発効された。この協定によって、モーリシャス共和国は中国へ輸出するほとんどの製品に対して関税ゼロを享受できる。モーリシャスといえば、2020年夏に日本の海運大手がチャーターした貨物船が座礁し、燃料の重油などが大量に流出し、深刻な環境汚染を引き起こされた国だ。

「中国とアフリカの農業貿易は、アフリカ諸国の開発の機会はもとより、中国の食料安全保障の強化、食料源の多様化という意味でも大きな可能性を秘めている」という。2020年10月には、米国からの大豆供給の不透明感が高まる中、タンザニアがエチオピアに次ぐアフリカで2番目の中国向け大豆供給国となった。

中国の商務部国際貿易経済合作研究院の研究員、ソン・ウェイ(Song Wei)さんは、「アフリカには、農業に適した豊かな土壌と広大な平野がある。農業生産量の増加を支援するための農業技術開発センターを中国はアフリカに立ち上げている。将来的にはアフリカの農作物が中国の市場の大きなシェアを占め、中国の現在の供給源に取って代わる可能性がある」と言う。つまり、中国は米国からの農作物の輸入に頼らず、アフリカからの農作物の輸入で間に合う可能性が今後出てくるということだ。

中国のビジネスニュースを配信しているサイトChina Briefing(チャイナ・ブリーフィング)の2021年1月11日付け記事China’s Wang Yi Foreign Ministerial Annual New Year Tour Of Africa: 2021 Highlights)によると、「今年(2021年)は1月11日に、王毅(おうき)外相がナイジェリア連邦共和国、コンゴ民主共和国、ボツワナ共和国、タンザニア連合共和国、セーシェル共和国の5か国を公式訪問した」という。

中国は米国の影響なく、農作物の確保が可能になってくるかもしれない。今後、中国とアフリカ、および中国と米国の関係に注目したい。

ロシア「米国・欧州産農産物の輸入禁止令を続行」

米国のジョー・バイデン大統領は、2021年2月4日にアメリカ合衆国国務省で行なわれた外交方針についての初の演説で、ロシアについて「前任者(ドナルド・トランプ前大統領)とは全く異なるやり方だ、とプーチン大統領に伝えた。ロシアによる(米国の)選挙への介入や(米国への)サイバー攻撃や(ロシアの)国民へ毒を盛るといった攻撃的な行動に対して、逆らわない時代は終わった」と述べている。

一方でバイデン大統領は、「米国民の国益となり、米国民の安全を前進させる場合には、敵対する国や競争する国とも外交的に関与しなくてはならない」と述べ、米国とロシアで結ぶ「新戦略兵器削減条約(新START)」の5年延長には合意した。

アイルランドの日刊紙アイリッシュ・エギザミナーの2021年1月15日付けの記事(Russia extends ban on food imports for another year)
によると、「2014年から続いている米国・欧州産農産物の輸入禁止令を、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2021年末まで有効にした」という。

2014年8月6日に、プーチン大統領は、ウクライナ情勢をめぐってロシアに対して制裁を行なっている米国や欧州などの国々からの食品や農産品の輸入を禁じる報復措置を定めた大統領令に署名した。その国々とは、米国をはじめ、UK、EU、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、ウクライナ、アルバニア、モンテネグロ、アイスランド、リヒテンシュタイン公国、フィンランド、オランダ、リトアニア、ポーランド、ドイツだ。

これらの国々、特にEUにとって、ロシアは肉、乳製品、野菜、果物の最大の輸出相手国となっていた (ロシアへの輸入に占めるEU産物の割合は16%)。毎年、ロシア当局は、同禁止令のために集められた7,600トンの違反物(農作物やチーズや肉など)を破棄しているという。

フィンランドのフィンランド銀行移行経済研究所(BOFIT)の2021年2月5日付け記事(Russian agriculture enjoys another year of growth)によると、「この10年間、毎年、ロシアの農業生産高は成長しており、2020年には成長率が1.5%に減少したといっても、例外なく成長を遂げた」。

穀物の生産量は2020年に10%増加し、家畜生産も着実な成長を継続。特に民間の農業事業者による生産量は、国内の総農作物生産量の20%を占める割合にまで成長している。家庭農園は国内の総農作物生産量の4分の1を占めており、主にジャガイモと野菜を栽培しているという。

モスクワの世界見本市World Food Moscow(ワールド・フード・モスクワ)の2019年2月14日付け記事
(Where does Russia import fruit and vegetables from?) と2020年3月17日付け記事(Russia’s Top Ten Fruit and Vegetable Varieties)をみると、麦類、ジャガイモ、テンサイの生産量は世界有数のロシアだが、野菜や果物については、中国、トルコ、エジプトからの輸入に頼っている現状にある。

輸入している野菜と果物の量の順位をみると、2019年には、1位:みかん、2位:バナナ、3位:リンゴ&洋梨、4位:トマト、5位:ぶどう、6位:石果、7位:ジャガイモ、8位:タマネギ、9位:トロピカルフルーツ、10位:きゅうり。2020年には、1位:バナナ、2位:みかん、3位:トマト、4位:ぶどう、5位:リンゴ、6位:オレンジ、7位:桃&ネクタリン、8位:ジャガイモ、9位:洋梨、10位:タマネギ&ニンニクとなっている。

2021年に米国がバイデン政権に変わったため、ロシアの農作物の輸入状況も変わるかもしれない。ロシア vs. 米国、ロシアと農作物を取引する世界各国の動向に注視したい。

中東イエメン『飢饉危機』

米国AP通信の2021年2月5日付け記事(Biden ending US support for Saudi-led offensive in Yemen)によると、「米国のジョー・バイデン大統領は、2021年2月4日にアメリカ合衆国国務省で行なわれた外交方針についての初の演説で、中東イエメンについて、(イエメンで5年続く)この内戦は終わりにしなければならないと述べて、ドナルド・トランプ前政権が積極的に行なってきたサウジアラビアが主導する軍事作戦への支援を停止することを明らかにした」とある。

インドの日刊紙ヒンドゥスタン・タイムズ (Hindustan Times) の2020年12月14日付け記事(5 million Yemenis ‘one step away from famine’ in 2021, UN warns)によると、「イエメンでは500万人が2021年内に飢饉に陥る寸前となるだろう」という。

ドイツのスマート・ウォーター・マガジン(Smart Water Magazine)の2021年2月9日付け記事(Germany to help farmers withstand shocks like COVID-19 and extreme climate events)によると、「ドイツ政府は4000万ユーロを、国際連合食糧農業機関(FAO)へ寄付し、ソマリアとイエメンなどを支援する。イエメンへの支援は国連開発計画(UNDP)と提携し、農業などの支援を行ない、約94,000人が支援を受ける予定となっている」。

UNICEF東京事務所のサイトの情報によると、日本政府もイエメンに2.5億円(2020年2月に供与)を寄付しており、イエメンでの多分野にわたる人道支援を行なっている。

今後のイエメンの飢饉危機の改善をはじめ、農業の発展を願う。

文=藤本庸子(Yoko Fujimoto) ロサンゼルス在住ライター

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