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【世界の注目農業ニュース】米国ハイテク屋内農業ベンチャー/アフリカ小規模農家を自然災害から守る

ここ数日の、日本のニュースをみると、国内では新型コロナのワクチン関連、国際ではミャンマー政府のクーデター関連がトップとなっている。米国も日本と同じだ。米国はここに「東部の大雪と西部の大雨による土砂崩れの自然災害」のニュースが加わり、農業への影響も懸念されている。そんな中、「好調な農業ビジネス」を見つけた。米国ロサンゼルス在住のライター、藤本庸子が解説する世界の農業ニュース。

米国『ハイテク 屋内農業のベンチャー企業が上場』

米国のハイテク屋内農業のベンチャー企業「AppHarvest, Inc.(アップハーベスト株式会社)」(本社:ケンタッキー州モアヘッド)が、2021年2月1日、株式市場「NASDAQ(ナスダック)」に上場。各メディアが報道した。

2017年2月にスタートした「AppHarvest, Inc.(アップハーベスト株式会社)」は、輸入の農作物に代わる国内市場向けの野菜や果物を効率的に環境に優しい方法で生産する大規模な屋内農場を開発した。

同社のウエブサイトの情報によると、創業者兼CEOのジョナサン・ウェッブ(Jonathan Webb)さんは、ホワイトハウスの目標である「2025年までに、軍の何百もの施設で使用する電力を再生可能なエネルギー源から20%得ること」を達成するために、アメリカ国防総省で大規模な太陽光発電プロジェクトに携わっていた人物だ。しかし、投資家や共和党および民主党の議員らの応援を受けて2017年にワシントンD.C.を去り、自身の生まれ故郷であるケンタッキー州北部のアパラチアへ戻り、同社を設立し、現在に至る。

通常の農業で使用する水の量より90%少ない水で農業が行なえるという同社の農業方法では、天候不順や自然災害による不作は皆無だ。しかも、使用する水は100%雨水のリサイクル、光には太陽光、LEDライト、高圧ナトリウムランプを用い、環境に優しいサスティナブル(持続可能)を主軸にした事業を行なっている。

屋内農場の敷地面積は60エーカー。東京ドーム5個分に相当する広さだ。今年のトマトの予測生産量は4500万ポンド(約2000万キロ)。今後、別の2か所にも15エーカーと60エーカーの屋内農場を建設する予定で、将来の見通しは明るい。

米国AP通信の2021年2月1日付けの記事(AppHarvest, a Pioneering Developer and Operator of Sustainable, Large-Scale Controlled…,Feb.01 2021)に掲載されていた同社のプレスリリースによると、「本日、アグテック会社のAppHarvest(アップハーベスト)は株式を公開する」とある。

「アグテック(AgTech)」とは、英語の「Agriculture Technology(農業テクノロジー)」の略語で、ITをはじめ、最先端の技術を導入した農業のことだ。

社長のデヴィッド・リー(David Lee)さんは「食品市場の消費者は、購入する食べ物にこれまで以上に用心深くなっており、知識も豊富。アップハーベストには消費者に信頼されるサスティナブルな(持続可能な)ブランドを築く絶好のチャンスがある」と話す。

米国は、つる作物(トマトやぶどうなど)の半分を輸入に頼っている現状にある。同社の事業によって、米国のつる作物の生産量は改善されていくだろう。同社のキャッチフレーズは「We’re within a day’s drive of 70% of the population.(栄養満点の食べごろの農作物を)全米人口の70%へ1日で届ける」。先月、同社は初のトマトの収穫があり、大手スーパーマーケットチェーンの「Kroger(クローガー)」「Walmart(ウォルマート)」「Meijer(マイヤー)」「Food City(フード・シティ)」「Publix(パブリックス)」へ1月19日より出荷を開始した。

同社の2021年純利益は2100万ドル、EBITDA(償却前利益)は4100万ドルと予測されている。取締役会の役員にカリスマ主婦の先駆者で実業家のマーサ・スチュワート(Martha Stewart)さんの名前もある。現在、同社の従業員数は350名。1万人が求人申し込みしてくるほどの人気ぶりだ。

米国には同社に先駆けて屋内農場を行なうベンチャー企業の「Gotham Greens(ゴッサム・グリーンズ)」や「vertical farming(垂直農業)」を手がける数多くの農業ベンチャー企業が存在する。

「AppHarvest, Inc.(アップハーベスト株式会社)」の上場によって、米国の農作物市場に変化が出てくることは間違いないだろう。今後、同社および同業他社の活躍に期待したい。

アフリカ『 ベンチャー企業が小規模農家を自然災害から守る』

アフリカの起業家2人が小規模農家を対象にした「インシュアテックによって、自然災害からアフリカ全土の農民を守る」というユニークな事業を広めている。

「インシュアテック(InsurTech)」とは、「保険(Insurance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語だ。

米国でIT系のスタートアップやウエブに関するニュースを配信しているサイトのテッククランチ(TechCrunch)の2021年1月25日付けの記事(Kenyan insurtech startup Pula raises $6M Series A to derisk smallholder farmers across Africa)によると、「ケニア人のインシュアテックのスタートアップPulaがシリーズA(企業が最初の重要なベンチャーキャピタル出資を受ける段階)の600万ドルを調達し、アフリカ全土の小規模農家の自然災害をはじめとするさまざまなリスクを軽減していく」という。

「Pula(プラ)」は、2015年にローズ・ゴスリンガ(Rose Goslinga)さんと トーマス・ンジェル(Thomas Njeru)さんによって設立されたベンチャー企業だ。

アフリカの農業保険料の価値は世界全体の1%未満のため、ほとんどの小規模農家の農民は農業の保険を持つことが難しい。そのため、洪水、干ばつ、疫病、雹(ひょう)などの自然災害による経済的な損害の保護がされていない。

「Pula(プラ)」はテクノロジーとあらゆるデータ(天候のパターンや農家の損失などの情報)を駆使して、さまざまなリスクに対応できるようにしている。しかし、保険料の支払いを躊躇する農民が多いため、同社は銀行と提携して、銀行が農民とローンを組み、銀行が先に農民の保険料を同社へ支払うことにした。農民は農作物の収穫後、ローンを銀行へ返す(つまり、保険料を後払いする)という仕組みだ。政府の補助金プログラムと協力もしている。

現在、同社のクライアントは、World Food Programme(国際連合世界食糧計画)、Central Bank of Nigeria(ナイジェリアの中央銀行)、Zambian government(ザンビア政府)、Kenyan government(ケニア政府)、東アフリカの小規模農家を支えるNPOのOne Acre Fund(ワン・エーカー・ファンド)、ケニアの農業ベンチャー企業のApollo Agriculture(アポロ・アグリカルチャー)、大企業のFlour Mills(フラワー・ミルズ)やExport Trading Group(エクスポート・トレーディング・グループ)など。

コロナ禍にもかかわらず、アフリカの農業は作業を続けているため、同社の規模は2倍に成長している。アフリカには7億人の小規模農家の農民がいる。今後の同社やアフリカの農業の動向に注目したい。

アジア『 ミャンマー 6%の経済成長を計画』

現在、世界中の注目を浴びているミャンマー。同国の軍は2021年2月1日に、アウン・サン・スー・チー国家顧問をはじめ、ウィン・ミン大統領、与党の国民民主連盟(NLD)の幹部などを相次いで拘束し、クーデターを発生させた。

農業大国のミャンマーだが、農民たちはこのクーデターで影響を受けているのだろうか?

ミャンマーの英字新聞ザ・ミャンマー・タイムズの2021年1月6日付けの記事(Myanmar targets 6% economic growth in 2021, 06 JAN 2021 によると、「政府は2021年に6%の経済成長をめざす」という。

政府は各事業における成長率の目標を掲げている。農業は2.6%、産業は6.5%、サービス業は7.4%。特に農業について言及しており、「モンスーンの洪水による作物の損失を減らす計画による、国の気候に適合させた新しい農業方法で収穫する作物の利益を期待している」とのこと。

同国の経済学者らは「農業を強化することは、経済成長にとって良い戦略だ」という。特に衣服製造業がコロナ禍で打撃を受け、数千人の失業者が出たこともあり、農業に力を入れなければならない状況なのだろう。

「新しい農業方法」については詳しく記述されていないため、どんな方法なのか不明だが、ミャンマーの政府が安定しなければ、同国の農業をはじめ、経済成長は難しくなるだろう。

米国のジョー・バイデン大統領は 2月1日、同国で発生した軍事クーデターを受け、「米国は適切な行動を取る」と表明し、同国に対する制裁復活の可能性を示唆した。今後のミャンマーの動向に注視したい。

文=藤本庸子(Yoko Fujimoto)

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