インタビュー

地域の主要経済を支える、カンボジア人初の現場リーダー

選果場のベルトを流れるみかん

2019年から日本で始まった新しい外国人の在留資格である、特定技能制度。2019年10月に特定技能の資格で来日したカンボジア人のケン チャンナラーは、2020年11月、いち早く外国人スタッフをまとめる現場リーダーに昇進。日本の農家と、外国人スタッフをつなげる役割として期待されている。ケン チャンナラーの、愛媛県八幡浜市のみかん選果場での仕事を紹介しながら、技能実習と特定技能の違いについて解説する(前編はこちら)。

カンボジア人女性スタッフ3名と情報交換をするチャンナラー

カンボジア人女性スタッフと情報交換をするチャンナラー

11月、取材に訪れた愛媛県八幡浜市の川上地区は、みかんの収穫と出荷の真っ盛り。四国南西部、九州方面に突き出した細長い佐田岬半島の、おだやかな内海に面しており、石積みの階段によって組まれた段々畑があたり一面に広がっている。太陽からの直射日光、海からの反射熱、石垣の幅射熱、川上地区で「3つの太陽」と呼ばれる環境により、甘みたっぷりのみかんが育つと言われている。

海のすぐ側に段々畑が広がる川上地区。

海のすぐ側に段々畑が広がる川上地区

 

朝8時前、選果場に到着したのはマイクロバス。乗っていたのは、近隣の町から選果のために来てくれる地元の女性スタッフたちだ。年々、高齢化で来てくれる人が少なくなり、人手不足が続いている。

続いて現れたのは少し離れた場所の寮に滞在しているチャンナラーと男性スタッフ、そして隣接するJAの建物に寄宿するカンボジア人女性スタッフたちが次々に出勤してくる。女性スタッフたちの明るい笑顔と挨拶が印象的だ。

選果上の前で検温をする高齢女性2人

隣町からお手伝いに来る地元のスタッフたち

出勤するカンボジア人女性スタッフ。

出勤するカンボジア人女性スタッフ

チャンナラーのリーダーとしての一日のはじまりの仕事は、選果場の日本人ベテランスタッフに、当日の外国人スタッフの体調や様子を報告すること。そして当日の作業を確認することだ。

女性スタッフたちは、主に生傷がついたみかんを選別したり、包装、箱詰めする作業、男性スタッフたちはかご一杯のみかんを運ぶなどの力作業に当たる。

糖度やサイズ、外観を測る精密な機械と人の手によって丁寧に選別されたみかんは、それぞれ箱詰めされる。糖度12度以上でサイズも合格したみかんは川上共選のブランドみかん「味ピカ」となり、丁寧に包装されて主に東京の市場に高値で出荷される。川上共選では現在、年間約7,000トン出荷されているという。単純で地味な作業だが、地域の経済を支える、とても重要な仕事となっている。

チャンナラーは、持ち前の責任感と真面目さで、地元のベテランスタッフからも信用は厚い。

チャンナラーと話す

仕事開始前にその日のスタッフの様子や体調を報告

選果場のベルトを流れるみかん

選果場の様子。カンボジア人スタッフ約15人を含む、約5〜60人が働いている

地元女性スタッフとチャンナラー

お昼休憩中には、地元スタッフと談笑する場面も

「ナラ―さんは、カンボジア人スタッフのまとめ役として働いてくれて、とても助かっている。昨年も来てくれたので、ぜひ今年も、とリクエストしました」

川上共選の共選長、清水重伯(しげのり)さんはそう話す。

川上共選・共選長、清水重伯(しげのり)さん

川上地区では、高齢化による人手不足で、20年程前から中国人の技能実習生、その後にベトナム人技能実習生を受け入れてきた。しかし、選果場の仕事は、11月~2月の収穫期に集中する短期間。技能実習生の派遣は管理団体が行うが、人手不足が全国的に深刻化するなかで、人数を確保することが難しくなってきた。そこで、特定技能への切り替えを決断したのだと、清水さんは言う。

「切り替えは大変な面もありましたが、日本語ができますし、仕事もすぐ覚えてくれる。カンボジア人の方々は、仕事が丁寧で、きちんとくさりの原因となる生傷も見てくれます」。

技能実習生は仕事を覚えるのに1~2週間かかり、さらにお金の数え方や払い方を教えることから始めていた。特定技能の場合は、既に日本での勤務経験者のため、即戦力となっているそうだ。

ただし、目下の課題は住む場所だという。

「農家さんの家に滞在できるといいのですが、収穫の人出を泊めているため、いっぱいです。今はJAの施設で間に合っていますが、人数がもっと増えると難しくなる」

実は、外国人スタッフの宿泊場所は、日本全国の農村地域で課題となっている。空き家は、短期間の契約では使えないのだという。

うまく運営している他の地域の事例などを参考にしながら、解決していきたい、と清水さんは語ってくれた。

取材した日は、次々と収穫されたみかんが運び込まれ、一日の作業が終わったのは、午後8時過ぎ。チャンナラーは、リーダーとしての初日を終えて、「カンボジア人スタッフたちが困ったことなどを、きちんと日本人のスタッフに伝えられるようにしたい」と話す。

今年、チャンナラーは一度カンボジアに帰って結婚式を挙げる。婚約者は現在、日本の他の地域の縫製工場で働いている、カンボジア人女性だ。最初に日本に技能実習で訪れる前の、プノンペンの研修施設で出会ったという。

現状、特定技能1号の資格では、家族の帯同は認められていない。結婚した後、二人で日本に帰ってきても、離れ離れに暮らすことになりそうだ。しかしそれでも、チャンナラーは日本で働きたい、と話す。

やる気があり、能力の高い外国人スタッフが日本に長く滞在できるように、制度も環境も変わっていくことが必要となっている。

 

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