インタビュー

外国籍人材活用の最前線!技能実習と特定技能の違いとは?

みかん畑を背景に立つケン チャンナラー

2019年から日本で始まった新しい外国人の在留資格である、特定技能制度。2019年10月に特定技能の資格で来日したカンボジア人のケン チャンナラーは、2020年11月、いち早く外国人スタッフをまとめる現場リーダーに昇進。日本の農家と、外国人スタッフをつなげる役割として期待されている。ケン チャンナラーの、愛媛県八幡浜市のみかん選果場での仕事を紹介しながら、技能実習と特定技能の違いについて解説する。

「まずは、お金を稼ぎたい。それが第一。それから、農業のことをたくさん勉強して、技術をカンボジアに持ち帰って、家族で経営する農場を大きくしたいです」。

見渡す限り、豊かな太陽の光を受けて黄色い果実を実らせるみかんの段々畑、眼下には瀬戸内海が広がる愛媛県北西部、八幡浜市川上町。秋、収穫期を迎えて柑橘系の爽やかな香りが街中に広がっている。どうして、日本に来たのか?という問いに、ケン チャンナラー(25)は上手な日本語で答える。

ナラーは、カンボジア南部のタケオ州出身。首都プノンペンから車で1時間程のところだという。両親は米農家。姉と弟2人の6人家族。20161月、20歳の時に技能実習生として初来日。大分県豊後高田市呉崎の白ネギ農家で3年間働いたのち、19年に滞在期限が来たため、一旦カンボジアに帰国。「もっと日本で働きたい」と、同年10月に、今度は特定技能1号の資格で再来日。YUIMEの通年雇用スタッフとして、夏は北海道でのブロッコリー収穫、冬は沖縄でのサトウキビ収穫、秋は愛媛のみかん選果場など、1年間人手が足りない日本各地にかけつけて経験を積んだ。2020年秋に、外国人で初めてYUIMEの現場リーダーに昇進した。同社で、外国人スタッフが現場リーダーに抜擢されるのは初めてだ。

選果作業をするケン チャンナラー

同じく日本人の現場リーダーである神山琢光は、

「ナラーは仕事が終わっても、農家さんや僕たちがしている作業を率先して手伝ってくれる。優しくて思いやりがあるな、と思っています」と話す。真面目で勉強熱心な勤務態度が評価された、という。

「技能実習の時と違い、色々な場所に行って、色々な作物の経験ができるのは面白いです。勉強にもなります」とナラーは言う。

ここで現在、高齢化による人材不足が深刻化している農業分野で、労働力として貴重な役割を果たしている外国人材の在留資格について、よく知らない人のために解説したい。

技能実習と特定技能の違い

技能実習制度は、1990年の入管法改正をきっかけにつくられた。前提は「外国人が日本の企業や農業などで働いて習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらう」というものだが、人気のない人手不足の職種に、安価な労働力として期待されているのが実情だ。この「本音」と「建て前」のゆがみが、さまざまな問題を生んでいる。

転職ができず、受け入れ期間は1~3年と短い(例外として、優良な管理団体・実習実施者のみに認められる技能実習3号は、最長5年間日本への滞在が可能)。中小の事業者によっては最低賃金以下で働かされたり、残業代が出ない、給料がきちんと出ないということも各所で発生している。出入国管理庁の調べによれば、2018年度に日本にいる技能実習生の数は過去最高の424,394人を記録し、そのうち2.1%9,052人の失踪者を出している。

一方、下図の通り、技能実習生資格での受け入れは、年々増加している。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で入国が激減しているが、正常化すれば、この増加トレンドは変わらないと思われる。

在留資格別在留外国人の推移

一方、週28時間以内に制約された留学生のアルバイトや、制度と実情が乖離している技能実習制度に代わり、期待されているのが、20194月から施行された、特定技能制度だ。

「技能実習生と特定技能の違いを端的に説明すると、技能実習生は研修生であり、特定技能は労働力です。技能実習生は、あくまでも研修のみ。特定技能は、日本人と同じように雇用ができる、ということですね」。YUIME代表取締役社長、上野耕平は説明する。

 特定技能は労働力を前提としているため、業種や業務に縛られることなく、日本人と同様にその日の状況に合わせた臨機応変な対応が可能になる。受け入れ期間は最大5年。同じ業種など、一定条件下で転職も可能となるので、雇用主からの一方的な条件による強制労働の常態化は避けられる。

 冒頭で紹介した、ケン チャンナラーのように、色々な場所で様々な経験を積みたい、向上心のある人材にはぴったりだ。

 また、YUIMEで全国の農家に派遣される外国人の仕事面や生活面のサポートをする、前述の日本人現場リーダー、神山はこう話す。

「手続きが終わって、保険証を渡した時の外国人スタッフの、叫びとも言える大騒ぎの様子が忘れられません。とても嬉しかったのです。彼・彼女たちにとっては、安定的な確固たる立場を得たような、特別なものだったのでしょう」

 YUIMEで派遣されているのは、すべて特定技能の資格を持った外国人で、一度日本で技能実習生を2年10カ月終了した後に一度本国に戻った人限定だ。もちろん、本国での状況との比較もあるだろうが、それにしても技能実習生当時の立場の不安定さが懸念される。

 昨年9月末の法務省のデータによると、「特定技能」で在留する外国人の数はまだ8,769人、農業分野に限れば1,306人だ。農業分野の都道府県別の受け入れは茨城県(164人)がトップで次いで北海道(163人)、熊本県(138人)と続く。送り出し国を国別でみるとベトナム(574人)がトップで、カンボジア(191人)、中国(155人)と続く。

 技能実習での在留人数に比べると、特定技能の資格を持った外国人の数は250分の1という少なさだが、これからどんどん増えることが期待される。(後編につづく)

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