インタビュー

会社員を辞めて実現する「社員のために成長する農業」【北海道・けーあいファーム】

東京での会社員生活に終止符を打ち、故郷の北海道に戻って農業を始めたのは16年前のこと。以来、けーあいファームの五十嵐重明社長は着実に事業を拡大し、現在の作付け面積は90ヘクタール。現在は従業員約60名を抱える、大きな農場に。生き生きと多くの女性が働く職場も印象的だ。その農場経営の根底にあるのは、「働く人のために成長する、新しい農業の形」。YUIMEの人材支援をうまく活用しながら、理想の雇用を実現している五十嵐重明社長に話を聞いた。

◎けーあいファーム(北海道千歳市)
・作付面積90ヘクタール
・売上高1億5千万円
・露地栽培…85ヘクタール
・越冬ハウス100坪・・・7棟
・ビニールハウス80坪…2棟

設立2004年、法人化2013年
従業員数63名(役員3名、正社員13名、パート47名)
生産物:白菜、ブロッコリー、生食キャベツ、スイートコーン、加工キャベツ、かぼちゃ、ニンジン、大根(露地栽培)、小松菜、ホウレンソウ、きゅうり(ハウス)

けーあいファーム 代表取締役社長 五十嵐重明

従業員には雇用の不安を感じることなく、安心して働き続けてほしい――。
それが、北海道千歳市のけーあいファーム・五十嵐重明社長の経営理念だ。東京で10年間会社員として働いた五十嵐社長が、故郷で事業を起こそうと北海道に戻ってきたのは、2004年のこと。起業を目指しながら札幌で会社員として働き、プライベートでは妻と千歳市の畑で農業をする生活が始まった。
農業を続けていくうちに、五十嵐社長は、家族経営が大半を占め、後継者や人材不足に悩む農家の現状を目の当たりにするようになる。「農業を会社組織にできないものか」。そんな思いが募り、09年、専業農家となり従業員を2人ほど雇った。少しずつスタッフが増えて農場も拡大し、13年に株式会社けーあいファームを創立。法人化した時点で、従業員は50名にのぼっていた。実現するのは、「働く人と共に成長する」新しい農業の形だ。
「安定して雇用し続けるために農場の面積を拡大し、現在では作付面積が90haになりました。従業員の数に合わせて仕事を増やしていて、栽培する野菜も、従業員が通年で仕事をできるか否かで選んでいます」。

農閑期の冬には緊密な経営会議

北海道の農家の多くは、11〜4月は冬季休業に入る。冬の間は農業以外の仕事で収入を得る農家が多く、スタッフの雇用も夏季のみ、とする場合が多い。だが、けーあいファームは、基本的に通年雇用だ。
「農家にとっては夏だけ人が必要だけど、働く側にしてみれば、1年中仕事が必要ですよね。夏が終わったら仕事がなくなってしまう、という状況をつくりたくなかったんです。畑に雪が積もってしまう冬の間は、経営会議に時間を費やして、従業員仕事を洗い出し、見直しています」。
生産原価を出し、データを分析して戦略を練る。さらに、農作業中の事故を防ぐよう、安全性の向上をはかるための情報を集め、対策を講じる。そうするうちに、あっという間に冬が終わっている、と五十嵐社長は話す。「冬の間に経営会議をしておくことで、夏は収穫に専念できるという利点もあります」。

だが、冬に比べ農作業を行う夏季に、より人手が必要になることに変わりはない。今年の夏は、YUIMEからけーあいファームに3名が派遣された。
「誰にも迷惑をかけずに、夏だけ人手を増やす方法を模索していたことから、3年前からYUIMEを利用するようになりました。YUIMEは全国展開の人材派遣なので、冬になってうちの仕事が終わった後も、沖縄など他の地域に移って仕事を続けられる。そこが魅力でした。さらに、季節雇用だとどうしても単発になってしまって農業のプロフェッショナルが育ちにくくなるのだけど、そういう課題も、YUIMEがこれから解決していってくれるのではないかと期待しています」。

農業は「休みやすい」から主婦も安心

農業従事者のほとんどが男性と言われているが、けーあいファームは女性スタッフが多いことも特徴的だ。女性の応募が多い理由のひとつには、休暇の取りやすさがあるのだろうと五十嵐社長は話す。
「畑での作業は20〜30名で行うので、1人休んでも影響が出ない。だから休みを取りやすいんです。お子さんのいる方は、学校の用事や発熱など突発的な事情で、急に出勤できなくなることも多々ありますよね。そんな場合でも休みやすいので安心できるのか、主婦の方もたくさん働いています」。
また、女性は農業に向いている、とも五十嵐社長は言う。
「やはり、生き物を育てる仕事ですから。ここの野菜だけ元気がないと気付くなど、女性は畑の細かい部分にまで目を配るのが得意。それから、草取りのように黙々と続ける作業を飽きずにやれるのも、女性が多いですよね。男性のほとんどは、すぐに飽きてしまいますから(笑)。よく考えてみると、昔の農家さんでも、男性がトラクターを動かして、細々とした作業は女性が担当している場合が多い。昔は女性がトラクターの免許を持っていなかっただけ。女性も、農業に向いているんです」。
年に3回、バーベキューや忘年会などスタッフが楽しめるイベントも企画している。1ヶ月ほど前から準備をして大規模に行うため、準備の過程で仕事以外のコミュニケーションが生まれる。
「イベントを通じてチームワークが育まれ、職場環境にも活気が出るんです。和気あいあいとした雰囲気なので、短期雇用の人も打ち解けやすいと思います。今年はコロナ禍の影響で、こうしたイベントを行いにくい状況なので、残念ですね」。

北海道・千歳市のけーあいファームの農場。白菜、キャベツ、ブロッコリーなどを栽培する。順調に拡大し、現在は90ヘクタールに。

文=吉田彩乃 写真=会田 聡

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