コラム

【米国で人気の日本食材】なぜ現地で大人気?日本風野菜を作るカリフォルニア農場

農場のワゴンツアーの様子

近年、和食ブームが起きているアメリカ。世界的な流行の一大発信基地でもある。現地で日本食材はどのように消費・生産されているのだろうか。ロサンゼルス在住のライター、藤本庸子さんがレポートする。

ポイント
・カリフォルニアでも果物・野菜狩り「ユーピック」が人気
・農場見学ツアーやドライブスルー販売も
・「アサワガ農園」では世界で広がる「不耕起栽培」を実践

体験型で人気の日系農場「タナカ・ファームス」

筆者は20数年前に、カリフォルニア州サンディエゴ郡カールスバッド(Carlsbad)にあるラナンキュラスの花畑「ザ・フラワー・フィールズ・アット・カールスバッド・ランチ(The Flower Fields at Carlsbad Ranch)」とイチゴ農園「カールスバッド・ストロベリー・カンパニー(Carlsbad Strawberry Company)」を訪れて、花見とイチゴ狩りを楽しんだことがある。カリフォルニアならではの経験だ。

前回のコラムで触れた通り、日本の国土がすっぽりはまってしまう広さのカリフォルニア州では、全米で生産されている野菜や果物の80%を生産している。

カリフォルニア州の北から南まで、イチゴをはじめ、オレンジ、チェリー、大根、カボチャなどの「U-Pick(ユー・ピック)」を行なっている農園や農場も数多くある。

「U-Pick(ユー・ピック)」とは、「あなた(U=You)」が「取る(Pick)」という意味。つまり、果物や野菜の「もぎとり」のこと。一般の消費者が農園や農場を訪れて楽しめる「ユー・ピック」は、カリフォルニア州で人気となっている。

それらの農園や農場では、大手スーパーマーケットやグロサリーストアで見かけない日本風の果物や野菜も目立つ。

南カリフォルニアで代表的な日系農場のひとつ、「Tanaka Farms(タナカ・ファームス)」でも、「ユー・ピック」を行なっている。「イチゴ狩りや野菜の収穫体験ができて、丁寧に作った果物や野菜は、スーパーマーケットで買うより断然に美味しい」と多くの消費者から絶賛されている。

同農場は、L.A.から車で南へ1時間ほどの町、カリフォルニア州オレンジ郡アーバイン(Irvine)にある。1900年初めに日本(広島県)から移民したテルオ・タナカ(Teruo Tanaka)さん(カリフォルニア州の小さな農場で働く農場労働者だった)の息子で日系2世のジョージ・タナカ(George Tanaka)さんが、1940年に同農場を創業し、現在もタナカさんの家族が経営している。

タナカ・ファームスの農場

タナカ・ファームスの農場。以下、写真はタナカ・ファームス提供

現在のオーナー、ケニー・タナカさんの家族

現在のオーナー、ケニー・タナカさんの家族。写真右がケニーさん

現在のオーナーは、日系4世のケニー・タナカ(Kenny Tanaka)さん。ケニーさんに「人気の野菜と果物は?」と訊くと、「65種類以上の野菜を栽培しているから、どの野菜が人気かと決めるのは難しい。あえて言えば、自分自身も好きなチンゲン菜と紫カリフラワー」と答える。

イチゴ、薩摩みかん、バルトメロンが人気

果物では、イチゴが人気だという。3月から6月にかけて、イチゴ農園に一般客を入れ、客が自由につるからイチゴをもぎ取れる「U-Pick(イチゴ狩り)」を実施している。「イチゴ狩り」は、最高に新鮮なイチゴが手に入るから好評なのだとか。

タナカ・ファームスが栽培しているイチゴ

タナカ・ファームスが栽培しているイチゴ

ローカルビジネスレビューサイトの「Yelp(イェルプ)」で、客のレビューを見てみると、やはり「イチゴはスーパーマーケットで買うより甘くて美味しい」という声が目立つ。

美味しいイチゴを育てる秘訣は何だろう? ケニーさんは「正直言って、特に秘訣はない。“甘くて美味しい” とお客さんが言ってくれるのは、熟して食べ頃になった新鮮なイチゴをタイミングよくもぎ取って食べるから。まだ熟していない青みがかったイチゴを取った後、赤くなるまで待って食べても甘さが増すことはなく美味しくない」と明かす。

イチゴは、つるから取ったらすぐ食べるのが基本。当たり前のことだが、収穫後のイチゴは時間が経つと台無しになってしまう。

同農場では、ドライブスルーで野菜や果物を販売している。

タナカ・ファームスのドライブスルーのマーケット

タナカ・ファームスのドライブスルーのマーケット

よく売れる野菜は、日本風きゅうり(Japanese Cucumber $1/lb – 454グラムが約107円)、カボチャ(Kabocha $2.49/lb – 454グラムが約266円)、チンゲン菜(Bok Choy $3.75/lb – 454グラムが約401円)、紫カリフラワー(Purple Cauliflower $2.99/lb – 454グラムが約320円)、白いトウモロコシ(Sweet White Corn $0.99/each – 1個約106円)、マウイ島特産タマネギ(Maui Onion $2.49/lb – 454グラムが約266円)という。

よく売れる果物は、薩摩みかん(Satsuma Tangerines $1/lb – 454グラムが約107円)と日本風バルト・メロン(Balt Japanese Melon $1.49/lb – 454グラムが約159円)とのこと。

では、質の良い農作物を栽培する際に最も重要なことはどんなことなのか?「質の良い土壌と良い気候が最も重要。あとは農作物につく虫に注意すること」とケニーさんは強調する。

同農場のウエブサイトでは、野菜や果物の料理のレシピも載せており、野菜と果物を作るだけではなく、消費者へ美味しい食べ方の情報も提供している。ドライブスルーのマーケットでは、チョコレートとホワイトチョコレートにディップしたイチゴのデザートも販売しており、同農場の農作物への愛が感じられる。

不耕起栽培を実践する「アサワガ農園」

前回のコラムおよび前述の通り、「カリフォルニア州では全米で生産されている野菜や果物の80%を生産している」。そして、同コラムシリーズの第1回目(高値の柿はどこから仕入れている?)で触れた通り、高級スーパーマーケット「Gelson’s Market(ゲルソンズ・マーケット)」で扱っている日本風の野菜や果物のほとんどはカリフォルニア産だ。

しかし、「Japanese vegetable farmers(日本の野菜農場)」とグーグル検索をしてみると、最初に出てくる「Japanese Vegetable Production – UC Small Farms(カリフォルニア州立大学の大学農業研究プログラム)」の次に出てくるのが、コネチカット州の東北地域にある「Assawaga Farm(アサワガ農園)」だ。

アサワガ農園の畑

アサワガ農園の畑。以下、写真はアサワガ農園提供

同農園の創業者のひとり、竹村葉子さんに「なぜ、日本風の野菜を栽培しているのか?」と訊くと、「この地域では日系の農場が少ない。地元産(アメリカ産)の日本風野菜も珍しいから」と、他の農園や農場との差別化を強調する答えが返ってきた。

アサワガ農園の共同創業者、竹村葉子さん

アサワガ農園の共同創業者、竹村葉子さん

栽培しているのは、小松菜、水菜、ケール、ニンジン、ビーツ、ネギ、レタス、ブロッコリー二、ニラ、ディル、パクチーなど、160以上の品種で、50種類以上の野菜。

これらの野菜をファームスタンドとファーマーズマーケットで、5月下旬から11月下旬まで販売している。竹村さんは、「すぐに売り切れるのは、ニンジン、ネギ、レタス、ブロッコリー二、新じゃが、ほうれん草、ニンニク。夏が短い東北地域では、トマト、パプリカ、きゅうりなどの夏野菜が大人気」と話す。

アサワガ農園のファームスタンド

アサワガ農園のファームスタンド

日本風の主な野菜の値段は、「ファームスタンドでは経費(交通費)がかからないため値下げしているが、ボストンにあるファーマーズマーケットでは、白菜は$2.75/lb -454グラムが約294円、小松菜は1束$3.50 – 1束が約375円、水菜は1束$3.50 – 1束が約375円、大根は$2.50/lb – 454グラムが約268円、ほうれん草は$10/lb – 454グラムが約1070円、カブは1束$3.50 – 1束が約375円」という。

同農園の特徴は「不耕起栽培」。

「農地をまったく耕さず、なおかつ、全て手作業。多年草の花や果樹などを植えて、なるべく土壌のさまざまな微生物や菌糸を大切にし、地下だけではなく地上でも生物多様性を促進している」と竹村さんは説明する。

「質の良い野菜を作ることに最も大切なことは?」と訊くと、「地上の非生物的な条件(太陽、水、温度など)は大切だが、土の微生物、土の構造、土の栄養素(特に忘れがちな微量ミネラル – Mo, B, Mnなど)が最も大切」と竹村さんは力説する。

農園を経営していて一番の喜びについて、竹村さんは「お客さんに喜んで食べてもらえることが一番うれしい」と言う。

アサワガ農園で栽培している主な野菜

アサワガ農園で栽培している主な野菜

アメリカでも日本でも、どこにいても美味しい野菜と果物は、人の身体はもとより心をも健康にしてくれる。美味しい農作物、特に日本食材について今後も調べていきたい。

●Tanaka Farms(タナカ・ファームス)の情報
URL:https://www.tanakafarms.com
農場の場所:5380 3/4 University Dr., Irvine, CA 92612
創業年:1940年
創業者:George Tanaka (ジョージ・タナカ)
現在のオーナー:Kenny Tanaka(ケニー・タナカ)

●Assawaga Farm(アサワガ農園)の情報
URL:https://ja.assawagafarm.com
農園の場所:626 Providence Pike, Putnam, CT 06260
創業年:2018年5月
創業者:竹村葉子&Alex Carpenter(アレックス・カーペンター)

【米国で人気の日本食材レポート】
①高値の柿はどこから仕入れている?
②日系スーパーが輸入している食材と産地はどこ?
③カリフォルニアの老舗農場で人気の食材は?

(註1)同コラムシリーズの第1回目(高値の柿はどこから仕入れている?)で高級スーパーマーケット「Gelson’s Market(ゲルソンズ・マーケット)」で扱っている日本風の野菜について、および、第2回目(日系スーパーが輸入している食材と産地はどこ?)の「米国の一般的な大手スーパーマーケットではもやしを販売していない」とした記述は誤り。先月(2021年2月26日)、著者は「Gelson’s Market(ゲルソンズ・マーケット)」へ来店し、もやしが販売されているのを確認した。筆者の「一般のスーパーマーケットには日本風の野菜や果物が少ない」という先入観でこれまで買い物していたことを反省したい。
ちなみに、2021年2月24日、日本のディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、「Gelson’s Market(ゲルソンズ・マーケット)」を展開するGRCY Holdings, Inc.(GRCYホールディングス)の全株式を取得した。同マーケットで美味しい日本産の農作物が販売されることを筆者は期待している。

(註2)円換算は1ドル107円

文=藤本庸子(Yoko Fujimoto) ロサンゼルス在住ライター

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