コラム

【世界の注目農業ニュース】農産物の輸出で好調・不調な国はどこ?

2021年3月8日、米国と欧州連合(EU)は、英国のEU離脱後の農産物関税割当を調整するための交渉を締結。EUと英国間の牛肉、鶏肉、米、乳製品、果物、野菜、ワインを含む数10億ユーロの貿易を対象とする合意では、輸入割当量を変更せず維持するという。EUは、英国と同様に他の世界貿易機関の加盟国21か国とも交渉を行なっており、アルゼンチン、オーストラリア、ノルウェー、パキスタン、タイなどのいくつかの国とは交渉を完了(国際ニュース通信社ロイターの2021年3月8日付け記事(EU says it agrees post-Brexit WTO agriculture quotas with U.S.参照)。農産物の輸出で好調・不調な国はどこか? 米国ロサンゼルス在住のライター、藤本庸子が解説する世界の農業ニュース。

ポイント
・米国の穀物輸出量は、30年前の半分強に
・ブラジルは大豆生産・輸出国として台頭
・韓国はヴィーガン向けや調理済み食品の輸出を強化

米国『有力な穀物が衰退』

2021年3月3日付け国際ニュース通信社ロイターの記事(U.S. dominance in global grain markets has faded despite robust exports)によると、「世界の穀物市場で有力な米国は衰退している」という。

長年に渡って、米国は「World’s Breadbasket(世界のパンかご)」と呼ばれており、パンの原料である穀物(小麦、トウモロコシ、大豆)の輸出で世界をリードしてきた。しかし、近年では穀物と油糧種子の高値、世界的な需要の増加、通貨安などのため、米国は衰退に陥っている。現在、米国は世界の小麦、トウモロコシ、大豆の市場の4分の1強を輸出しているが、この量は30年前の半分強ほどだ。

とはいえ、小麦は中国の需要が高いこともあり、米国の小麦輸出量は、長期平均を下回ってはいるものの、2021年5月31日までの2020-21年度では4年ぶりの高水準となっている。

この状況に追い打ちをかけるのは、先月(2021年2月)にテキサス州をはじめ、オクラホマ州、ルイジアナ州などの米国南部で発生した記録的大寒波。テキサス州をはじめ、広範囲に渡って農業や畜産業が被害を受けた。米国ニューヨークタイムズ紙の2021年3月4日付け記事(Texas Farmers Tally Up the Damage From a Winter Storm ‘Massacre’)
によると、「テキサス州の農場主および牧場主の損失額は少なくとも6億ドル」とある。

そんな中、朗報もある。米国AP通信の2021年3月4日付け記事2020 marks increase for hot pepper production in New Mexico
では、「ニューメキシコ州では2020年に唐辛子が豊作だった」という。米国農務省が発表した数字によると、2020年は68,000トンの赤と緑の唐辛子が生産され、前年比8%の増加。 作物の価値も5,200万ドル近くに増加している。

米国では、ニューメキシコ州の唐辛子のような州の特産物を主流の輸出農産物に加えていく戦略が必要なのかもしれない。

ブラジル『世界の穀物市場10%を占める』

ブラジルは約50年前から主要な大豆生産国として台頭を始めている。その活躍は過去10年間で最も顕著で、米国が不作だった2012年には世界で最大の輸出国になり、現在、ブラジルをはじめとする南米は、大豆輸出で世界市場の半分を占めている。1990年後半に米国の大豆輸出は世界市場の60%近くを占めていたが、現在は35%となっている。

2021年3月4日付け国際ニュース通信社ロイターの記事(Brazil feeds some 10% of world’s population, research finds)では、「ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の調べによると、穀物と油糧種子は、人間の食料として消費され、また、食肉加工用の動物飼料として使用される。つまり、ブラジルの農業従事者らは2020年に、世界の人口の約10%を養ったことになる」とある。

ブラジルはここ数10年で食料の純輸入国から、世界最大の農産物輸出国へと成長している。2020年のブラジルの穀物生産量は、世界の8%を占め、2011年の6%から増加。特に、中国、EUなどに販売する大豆、牛肉、鶏肉などの農畜産物が好調で、世界的な農畜産業大国となっている。

ブラジル農牧研究公社は、国際通貨基金が算出したブラジルの穀物生産高の国際価格を基に調査した結果、「ブラジルは2020年に、世界の7億7,260万人に食糧を供給していることが分かった」という。

ブラジルの穀物(特に大豆)の輸出量の増加は、今後、米国や他国へどのような影響を与えていくのか注視したい。

韓国『農産物輸出が過去最大』

韓国の日刊新聞ザ・コリア・ヘラルド(The Korea Herald)の2021年3月3日付け記事(S. Korea seeks to sell more farm goods overseas amid pandemic)によると、「韓国農林畜産食品部によると、2020年に韓国の農産物輸出が7.7%増加し、過去最大の75億7,000万ドルに達したという。2021年の農産物輸出額を81億ドルまで成長させる計画があることを3月3日に発表した」という。

農産物以外では、コロナ禍で世界的に自宅で食事をする人が増え、健康食品として需要が高まったため、白菜と塩と唐辛子などで作る加工品のキムチの輸出も好調。2020年の輸出は37.6%増え、1億4,500万ドルに達した。インスタント・カップ麺も29.3%輸出が増え6億ドルに達し、原料の米も27.1%増え1億ドルに達した。

2021年は、韓国のエンターテインメントのブームである「Hallyu(韓流)」を利用して、農産物輸出でも東南アジアや中央アジアの市場に新規参入する。東南アジアへの輸出は、2020年比10%増加の17億ドルに達する見込みだ。

韓国政府は、ヴィ―ガン向けや海外向け調理済み食品を製造する韓国企業のサポートにも力を入れていくという。

世界各国、それぞれの国の農産物、特に特産物を世界市場へ広めることは、スポーツを通した人間育成と世界平和を究極の目的とした「オリンピック」「パラリンピック」と同様に、世界の人々との繋がりの促進にもなる。

2021年2月24日、日本のディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、米国の高級スーパーマーケット「Gelson’s Market(ゲルソンズ・マーケット)」を展開するGRCY Holdings, Inc.(GRCYホールディングス)の全株式を取得した。「ゲルソンズ・マーケット」をはじめ、米国の多くの一般的なスーパーマーケットやグロサリーストアなどで、美味しい日本産の種類豊富な農産物の販売ができるようになることを筆者は期待している。

文=藤本庸子(Yoko Fujimoto) ロサンゼルス在住ライター

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