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農業の「これから」を支える4つの農業支援サービス

2021年2月18日に、農水省の主催で「農業支援サービスの育成・普及に向けたwebシンポジウム」が開催された。同省は2021年度から、農業支援サービス企業の育成対策として新規の補助金を開始する。その応募要件等の説明会に併せて、すでに農業支援サービスを提供している事業者による講演を企画した。農業の「これから」を支える農業支援サービスとして登壇した4事業者の講演を中心にレポートする。

人手不足の解消や作業負担の軽減のために

農林水産省は、農家の人手不足の解消や作業負担の軽減のために「農業支援サービス」の育成や定着に力を入れている。具体的な施策として「スマート農業新サービス創出プラットフォーム」の設立・運営や農業支援サービスに取り組む事業者を対象とした補助金などを展開してきた。
今回のシンポジウムの目的は、農業支援サービスへの理解の促進、2021年度から新たに予算化した「農業支援サービス事業育成補助金」の説明である。サービス内容や利用方法、メリットなどが具体的にイメージできるように、先進的な農業支援サービスを提供して既に実績をあげている4事業者が講演を行った。

JATAFFのプレゼン資料

※「農業支援サービスの育成・普及に向けたwebシンポジウム」JATAFF佐藤様講演より

 

4つの先進的農業支援サービス

事業者毎に、前半は録画によるプレゼンテーション、後半は生中継で視聴者からの質問に答える形で進められた。当日の講演順に紹介する。

1)テラスマイル株式会社  データ分析サービス
IoTで膨大なデータを見える化し、品質・反収量・単価・生産性を向上させることを目的に、データ経営のための農業情報基盤『RightARM』を提供している。創業は2014年で、現在、20種類以上の品目について営農支援を行っている。また、5品目で統計的アプローチや機械学習、AIを活用した出荷予測を実証中。
サービスの導入に当たっては、スマート農業の導入相談から始まり、3,4年かけて一緒に進める形を提案しているとのこと。対象エリアは九州を中心にしていたが、昨年から地域を拡大中。品目については、露地野菜、施設園芸、果樹、お茶を対象としている。今後は水稲も適用実証する予定である。

テラスマイル講演の様子

※「農業支援サービスの育成・普及に向けたwebシンポジウム」
テラスマイル株式会社 代表取締役 生駒祐一様講演より


2)JA三井リース株式会社 シェアリングサービス

1台の農機を収穫期の異なる生産者で共同利用する「農機シェアリース」サービスを手がけている。現在の対象農機はコンバインで、1台のコンバインを、早生・中生・晩生の3利用者でチームを組み、2年間共同利用する。
2012年に事業検証を開始し、検証期間を合わせ、延べ45台を全国で運用した。結果として、コンバインを自己取得した場合の諸費用を含めたトータル費用に比べ、シェアリースの方が割安なことが評価され、200件弱の利用者で採用された。2020年度は計27台を運用し、延べ71件、19圏域で利用している。

2021年度からは地域内共同利用(ローカルシェア)を提案していく予定。将来的には、スマート農業機械のシェアリースにも取り組んでいきたいとのことである。

JA三井リースのプレゼン資料

※「農業支援サービスの育成・普及に向けたwebシンポジウム」
JA三井リース株式会社 農林水産本部 食農ビジネス推進部 大場俊明様講演より

3) YUIME株式会社 人材支援サービス
全国の第1次産業の人手不足を解消する人材支援サービスを提供している。通期の支援サービスも行っているが、特に好評なのは繁忙期に特化した人材支援サービス。繁忙期に特化した人材が毎年定期的に作業を行うことにより、生産性を向上することができる。人材派遣だけでなく、事業拡大における播種計画、人材計画のサポートも行っている。
特定技能1号の外国籍人材の派遣も可能で、現時点で130名程度が就労しており、今年度追加で200名弱を受け入れる予定。派遣先は、沖縄から北海道まで全国各地に及んでいる。
利用者の中には、人材不足で収穫ができず作付面積を減らしていた農家が元の倍の面積に増やした上、熟練作業者をYUIMEで確保できるというメリットを生かして、他の作物に拡大した事例もある。
日本全国の需要をタイムリーに把握し、的確かつ迅速に対応していくために、今年1月に新しい人材支援Webサービスを立ち上げた。申し込みから最短1ヶ月で人材派遣を可能とし、農家にとって有益なコンテンツも配信している。

YUIME講演の様子

YUMIE株式会社 取締役 江城嘉一講演より

4)株式会社オプティムアグリ・みちのく ドローンを活用した総合サービス
「スマートアグリフードプロジェクト(SAFPJ)」と名付け、AI・IoT・Robotics技術を生産者に無償提供。収穫された農産物を全量買い取り、付加価値のついた作物として販売するスキームのサービスを推進している。

現在の対象作物は水稲と大豆で、水稲に関しては、青森から兵庫までの5県で約400トンのスマート米を栽培中である。提供技術は、ピンポイント農薬散布、ドローン播種など。農家にはノーリスクのサービスであり、生産性向上、増産に加え、大幅なコストカットが実現できていることを評価されている。
今後は、データの蓄積・分析も進めつつ、ドローンを体系的に活用できるようにしていきたいとのこと。

オプティムアグリ・みちのくのホームページより

オプティムアグリ・みちのくのホームページより

具体的な質問や、サービスへの期待も

4分野から1社ずつが講演することで、農業支援サービスの全体像が掴みやすい講演会だった。どのサービスに関しても視聴者からの質問は活発で、費用や農家側で身に付けなければならない技術・スキルについてなど、利用者視点での具体的な問いが多かった。
どのサービスも農家の課題に寄り添ったものであり、視聴者の期待が感じられ、コメントの中には応援メッセージも散見された。農業支援サービスが拡大・定着することで、日本の農業が活発化し、安定的な発展が期待される。ビジネススキーム面においても、「オプティムアグリ・みちのく」の「スマートアグリフードプロジェクト」のような新しい試みが今後も生まれることで産業構造が変革する可能性も感じられた。
尚、シンポジウムでは、今回の補助金の審査基準・スケジュールに加え、「スマート農業新サービス創出」プラットフォームや関連する施策の紹介も行われた。農水省の資料はイベントページで公開されているので、興味のある方は参照されたい。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/service.html

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